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『ラジ&ピース』 絲山秋子

ラジ&ピース

絲山秋子(いとやま あきこ)

講談社文庫

ラジ&ピース
 彼女は自分の醜さに飽きるということがなかった。だが、それほど自分に固執するというのは、やはり一種のゆがんだ自己愛なのではないだろうか。そう思うとまたぞっとした。

 

うつくすま ふくすま
 男は盆栽ではないけれど -- いや盆栽だな。増長させたらいけないし、いじられてなんぼだし。できることなら今から年寄りになった頃のことを案じて育てていった方がいい。育てる?そう、育てないとオトコはだめになる。

 

 ラジ&ピースの主人公、野枝さんは自分を否定することによって生きているような人。容姿も性格もサイテーだと信じています。唯一のとりえは「声」なので、ラジオ局でアナウンサーとして働いています。

 

 自分の弱さをさらけ出せたら、それはそれは楽に生きていくことができます。なのに人は、それを隠そう隠そうとしてしまうのです。誰かに「ちょっと助けて」とか「それって、何故なの?」と聞くことができたら、褒められたら素直に「ありがとう」って言えたら、人生は何倍も楽に、そして楽しくなるものなのに。

 

 そんなツボを見事に外して生きている野枝さんみたいな人って、生きていくのが大変でしょうねぇ!「わたしに声をかけたって、楽しくないよ」なオーラを出しまくって生きていくのは、本人にとっては身を守るすべなのかもしれないけれど。それってつまらない努力だよって他人は思ってるんだよ~って教えてあげたくなってしまいます。

 

 そんなに力を入れて生きていかなくていいんだから。そして、あなたが思っているほど、周りの人はあなたのことなんか見ちゃいないんだよ。もっと力を抜いて生きていこうよ!ってね。

 

 「うつくすま ふくすま」 の中野香奈さんは、いつもの絲山さんの雰囲気の人だなぁって思いました。車が好きで、お酒が好きで、男のことはテキトーにあしらって、マイペースで生きている人。

 

 名前が回文になっていて、子供の頃に随分と「なかのっ、かな~」とからかわれ続けてきたんだと親に詰め寄ったことがある。というところは、かなりツボにはまりました。こういうセンス、大好きです。

 

 男性作家が描く女ってファンタジーですからね、そんな女いないよってのが登場しちゃうことがよくあるけど、絲山さんが描く女は間違いなくそこいら中にいます。辛くったって弱音も吐けず、親の希望どおりに育たなくてゴメンネと思いつつ、一生懸命に働いている女たち。

 

 頑張った割には出世するわけでもなく、結婚した友達とは話が合わなくなり、世間がどんどん狭くなっていきつつある彼女たちの、心の支えって何なんでしょうね?

 

921冊目(今年104冊目)

 

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日本の作家 あ行」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
TBとコメントありがとうございました。
何かが判った瞬間の主人公は、とっても素敵でした。
繋がっているんですよね、人間は。
自分の人生に置き換えてしまった作品です。

ゆうさん☆こんばんは
あんなにかたくなだったのに「そうなんだ!」と分かった瞬間に世界が変わるんですよね。
温かな人の気持ちが奇跡を起こせるんですね!

こんばんは♪私は、野枝さんの不器用さ、結構好きなんですよ。何かを表現することのできる人って、生き方が不器用な人が多いんじゃないか、と思ったりします。鎧をちょっと脱ぎ捨てた、野枝さんの笑顔を想像して、ほっこりした作品でした。

ERIさん☆こんばんは
不器用だからこそ、何かに集中できるってこともあるのかも?
とはいえ、いつも笑顔で生きることができたら、それは素晴らしいことですよね!

こんばんは。
絲山さんが描く女性は本当にそこら辺にいそうです。
私の中にもそんな部分があるな~って思います。
野枝の気持ちを気にしないで、どんどん世界に入り込んできた、医者の沢音が好きでした。

ななさん☆こんばんは
相手にお構いなく自分のペースでズンズンやってくる人っに、わたしは憧れちゃいます。
わたしにはそういう所が欠けているから、そういうパワーによって助けられることが良くあります。
野枝さんもそういう力を借りて、もっと幸せになって欲しいなぁって思いました。

Rokoさん、こんばんは。
警戒心が強く、満たされぬ日々を送っていた心がほぐされていくのがよかったです。
力の抜き方を教えられたみたいでした。
TB届かないと思いますが、試みさせていただきました。
http://1iki.blog19.fc2.com/blog-entry-542.html

藍色さん☆こんばんは
きっと野枝さんは、力が入りっぱなしで疲れていたのでしょうね。
もっと楽に生きて行けるんだから~って声援したくなっちゃいますよね。

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いつも不機嫌なFM放送DJという、ちょっと盲点を 突かれたような気持ちになる設定の小説だった。 主人公の野枝は、自分が醜い、という価値観を 木の根っこのように心に張り巡らせている人。 物心ついたときから、そのアイデンティティで生きてきた ものだから、他人に心を開くこともなく、人に甘えることもなく 物欲しそうな顔をしたこともない。他人が自分に親切にする、 ということを、一切信用しまいとして生きている。 その彼女が、分厚いガラスに隔てられた放送ブースに入ると 生き生きした声を...... [続きを読む]

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