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『エロス  もう一つの過去』 広瀬正

Eros

エロス

もう一つの過去

広瀬正(ひろせ ただし)

集英社文庫

 橘百合子さんは、自分が歌手になるなんて考えてみたこともありませんでした。それが、ひょんなことから歌手としての道が開けたのです。そして、大歌手となった今、もしも自分が歌手になっていなかったら、どんな人生だったのだろうかと考えてみたのです。

 もしもあの時、別の道を歩んでいたら?という思いは、誰にもあると思います。せっかくアドバイスをもらったのに、その通りにしなかったことを後悔したり、逆に言う通りにしてしまったことを後悔したり、どれが正解なのか?と考えれば考えるほど分からなくなってしまいます。

 この物語の舞台となっている時代は、紀元2600年(西暦1940年/昭和15年)を目指して、日本中がはりきっていた頃です。外国の文化がドッと日本へ入ってきたのもこの頃です。

 乗用車、ラジオ、蓄音器など、様々な新しいものが日常生活に登場しました。映画は無声からトーキーへと進化し、それまで和装が普通だったのが洋装へと変わりつつある時代でした。職業婦人が登場し、プロ野球も始まりました。

 物語が進むにつれ、この時代って普通の人にとっては、とても暮らしやすい時代だったんじゃないかなぁって思えてきました。

 マイナス・ゼロにも登場してましたけど、ここにも広瀬正クンが登場していました。音楽が好きで、模型やラジオも好きな彼は、少年ながらなかなかのマニアぶりでした。

 どんな運命が待っているのかは、誰にもわかりません。右へ行くか、左へ行くか、それを決めるのは自分しかいないんです。この物語から感じたのは、どちらを選ぶかということが問題なのではなくて、選択した世界で力いっぱい頑張ることこそが大事だってことでした。

 百合子さんが想像した別の世界も素敵でしたけど、実際もまた幸せな世界でした。もしも、と思い始めるときりがないけれど、前向きに生きている限り、どちらの世界へ進もうと、別の幸せが待っているものなのですね。

937冊目(今年120冊目)☆☆☆☆☆

 

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コメント

もしもあのとき…とは、誰もが思うことですけれど、いま生きているぼくにとってはこの世界が現実なのだから、ここで精一杯生きるしかありません。
でも、小説の中では、どちらがもうひとつの過去だったのかとか、いろいろと考えてみるのもおもしろい。
彼はいったい何を発明して一財産築いたのか、と思っていたら、それが結構重要なポイントだったり、なかなか遊びの多い方で、楽しみながら書かれたのでしょう。
広瀬少年はきっと出てくると確信してましたが、出てきたらいいな、と思った人たちとの再会もありました。

ディックさん☆こんばんは
どんな選択をしようと、それは自分の選んだ道なんだからと、胸を張って生きていけることが一番だなぁって思いました。
そして、広瀬正クンが参加していたというミヤタハーモニカ・バンドってのも懐かしかったです!

Rokoさんこんばんわ
2つの人生が微妙に交錯する、不思議なお話でした。どちらの人生もお互いに影響を受けているというか。
「マイナス・ゼロ」と同じく昭和初期の詳細な描写がレトロ好きにはたまりません。
もっと科学は発達していないものだと思っていたら、なかなかどうして、その頃からすごい技術力があったんですね。

日月さん☆こんばんは
昭和初期には結構色んなものができていて、ビックリでしたね。
戦争がすべてを変えてしまったけれど、それまでの時代だったら、行ってみたいなぁと思ってしまいました。

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» 「エロス」 広瀬 正 [日々の書付]
早世した天才SF作家・広瀬正氏の小説「エロス」。 副題に「もう一つの過去」とあるように、「もしあのとき、この人生を歩んでいなかったらどうなっていたか」というテーマで1組の男女の出会いとその後の人生を「現在」と「もう一つの過去」が交錯して描かれています。 まったく違った人生なのに、事件や人物は少しずつ形をかえて主人公たちとリンクしている。どんな人生を歩むにしても、同じ人間のことなので、周囲の出来事や人は大幅に変わることはないのかもしれません。 「マイナス・ゼロ」や「ツィス」のようなSF的... [続きを読む]

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