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『私の男』 桜庭一樹

私の男

桜庭一樹(さくらば かずき)

文春文庫

第138回(2007年下期)直木賞受賞作

 腐野(くさりの)淳悟は、わたしの養父だ。彼がわたしを引き取って育て始めたのは15年も前のことで、いまではもうはるか遠い、時の彼方の記憶だ。~ 中略 ~ わたしは小学四年生で、震災でとつぜん家族をなくした。淳悟は遠縁に過ぎなかったけれど、いくつかの複雑な手続きを経て養子縁組し、養父になってくれた。(本文より)

 

 淳悟と花は親子になり、かつては北の方で暮らしていたのだけれど、今は東京で2人だけで肩を寄せ合って生きているのです。

 

 2人には秘密があります。でも、それは2人だけの問題であって、他人に迷惑をかけているわけじゃないのに、どうして放っておいてくれないのでしょう?どうして余計なお世話をしたがる人が現れるのでしょう?このままで2人は幸せなのに。

 

 秘密を他人に知られないために2人は罪を犯しました。でも、それは仕方のないことだったのだと思います。

 

 「それを悪いことだと思うのはあなた方の理屈なのであって、わたしたちにとっては普通のことなんだから。人のプライバシーに首をつっこんだあなたが悪いんです。」って気持ちだったんだろうなぁと、わたしは思うのです。

 

 愛するってことは、身も心も虜にしてしまいます。そこに土足で立ち入るものは、どんなものであっても許せないのです。そこには理屈はありません。倫理観もありません。どんなことをしても、自分たちの世界を守ろうとするのは当然のことだと、わたしは思うのです。

 

 この小説の展開は実に面白いですね。最初に提示された出来事があって、時間をさかのぼるとその理由が分かってくる。もう1つさかのぼると、もっとよく分かってくる。孤独な2人がどのようにして生まれてきたのか、そして、どのように巡り合ったのかが、すぅっと分かってくるのです。

 

 この小説は、誰にでも奨められるとは思わないけれど、わたしは大好きです。

 

 あのカメラのフィルムには、どんなものが写っていたのでしょうか?

 

P.S. 拓銀の破綻って、東京にいるわたしにはピンとこなかったんですけど、「ああ、そういうことだったんだ」って今頃納得してしまいました。

 

941冊目(今年124冊目)))☆☆☆☆☆☆(絶対オススメ!)

 

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コメント

おお
Rokoさんのレビューで、面白そうなので図書館に予約を入れましたん

しかし先約が70人・・・・・
手元に届くのはいつになることやら。

Winosさん☆こんばんは
わたしのレビューが気に入って予約してくれたなんて、うれし~!!
わたしが予約した時は100人以上いたけど、今でもそんなにいるとは恐るべし。(*_*;
Winosさんになら、きっと気に入ってもらえると思うなぁ。
読んだら絶対に感想聞かせてね!

Rokoさん こんばんは
恋は盲目ですね。そう唄ったのは確かジャニス・イアンだったでしょうか。それにしても胸塞がれる小説でした。

Rokoさん、こんばんは。
読み応え、ありましたね。
過去に溯る独特の構成に深みに嵌まるみたいに読みました。
家族を知らなかった二人には、この生き方しかできなかったのかも知れないと…。

http://1iki.blog19.fc2.com/blog-entry-347.html

yoriさん☆Love is blind ♪ ですね
2人で肩寄せ合って生きていくしかなかった訳ですけど、愛は盲目であり、愛はいかなる障害も超えていくのですね。

藍色さん☆こんにちは
淳悟が母親から与えてもらいたかった愛というものを考えると、切なくなります。
そして1人だけ生き残った花は、周りが思っているのとは全く逆の事を考えていたのが印象的でした。

この本は、ずっとどうしようかな、と迷っていましたが、Roko さんがそういう評価なら、早めに読もうかなあ。
yoriさん もこちらの評価がきっかけでした。Roko さんの影響力って、大きいですね。

ディックさん☆こんばんは
この本は誰にでも奨められるって感じじゃないけど、一度捕まったら、もう逃げられませんよ!(*^^)v

こんばんわ。
迫力のある恋愛小説でしたね。
構成が凝っていて、喪失感を感じる展開も好きでした。
確かに万人向けとは言えないのかもしれませんが、一読の価値ありですよね。

i.a.さん☆こんばんは
どうしてなんだ?という気持ちに回答が与えられ、そして又違う疑問が湧く展開が見事でしたね。
物語の迫力に圧倒されてしまいました。

Roko さん、さきほど読み終えました。
あれこれ設定が耳に入ってきているので心配していましたが、そんなことはなかった。
客観的に考えれば、異常な物語なのに、小説はすっかり感情移入させて、登場人物になりきってしまえば、すなおに納得させられてしまいました。
客観的には「悲しい運命に翻弄される二人」なのだけれど、花は満たされていたのですね。
第一章に返って、「これから先が問題」のような気がしますが、でも花は淳悟を心の底から信じて疑わない。その絆の強さに打たれます。

ディックさん☆こんばんは
これだけ感情移入できる物語ってなかなかないなぁって思います。
人が何と言おうと、自分が信じる道を突っ走ることこそが一番の幸せだとわたしは信じたいです。(*^^)v

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» 私の男 [どくしょ。るーむ。]
著者:桜庭 一樹 出版社:文藝春秋 紹介文: 桜庭さんの直木賞受賞作。 結婚を控えた女の義父、それがタイトルの「私の男」なんです。 暗い、まとわりつくような男女の関係、暴かれていく過去の罪。 構成が変わっていて、物語は過去へ過去へとだんだん遡っていきます...... [続きを読む]

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