『モダンタイムス』 伊坂幸太郎
実家に忘れてきました。何を?勇気を。(本文より)
拓海(たくみ)くんが自分のマンションへ帰ってみると、知らない男が待っていたのです。その男に殴られ、椅子に縛りつけられてしまいました。そして、その男がこういったのです。
「勇気はあるか?」
この男からやっと解放されたかと思えば、今度は会社でとんでもない仕事をやれと言われてしまいます。拓海くんは、どうもトラブルに巻き込まれやすい体質みたいです。
拓海くんの職業であるシステムエンジニアは、伊坂さんの前職でもあります。システムエンジニアって、新しい職業ではあるけれど職人気質もあるし、オタク的な要素もあって、不思議なこだわりがある、ちょっと変な人が多い職種ですよね。
この本のタイトルになっている「モダンタイムス」「ダイハード」「クロウ」など、映画に関する話が色々登場しました。この本で描かれている21世紀後半に、こういう映画を知っている人達って、けっこうマニアックな人たちですよね。
そして「井坂好太郎」という作家が登場してくるのですが、この人がなかなかの曲者です。どこまで本気なんだか、冗談なんだか分からない発言が多いし、どんなに忙しくてもきれいなお姉さんには弱いし、かなり楽しんで作ったキャラだなぁって思いました。
この名前についてはあとがきで「これは単純に、小説家の名前を考えることが億劫になり、自分の筆名を変形させたに過ぎません。」と言っているけれど、こういう形で登場してくるのて、映画のカメオ出演のような感じで、伊坂さん自身も楽しんでるってことなんじゃないかなぁ?
今回も様々な名言がありましたが、わたしが一番気に入ったのはこれです。
人生は要約できねえんだよ
たとえば「チャップリンってどんな人だったの?」と聞かれて、「たくさん映画を作った人」とか「主演も、作曲もしたんだよ」とか他人には断片的なことしか分かりません。
どんな子供時代を送り、どんな友達がいて、どんな家庭生活を送り、どんな悩みがあって、どんな趣味があったのか?いろんな要素がその人を構成しているのに、他の人から見えるのは、その中のほんの一握りの部分でしかないのです。
自分では「これこそがわたしだ!」と思っていても、人からはそう見えていなかったり、人からは「あなたはこういう人だ!」と思われていても、本人は全然気が付いていなかったり、人間というのは究極のブラックボックスなのかもしれません。
追い詰められて初めて発揮される「火事場の馬鹿力」みたいなものって、わたしの中にもきっとあるんだろうなぁって、ラストの方を読みながら思ってしまいました。
勇気はきっと、出番を待っているのです。
P.S. 井坂好太郎 とか 播磨崎中学校 とかで検索してみようねぇ!
946冊目(今年129冊目))☆☆☆☆☆
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おお!
「人生は要約できねえんだよ」で、
あたしが中学時代に読んだ
『国語入試問題必勝法』(清水義範)を
思い出しました(* ̄m ̄) ププッ
これは中学生には強烈でした★
オチになるから、言わない方が良いのかなぁ・・・。
おばあちゃん(だったと思う・・・)が
回想シーンを交えつつこれから息を引き取るのだけれども(ちがうかも??)、
そこで入試問題が問うのね。
「おばあちゃんの今の気持ちを、十文字以内で答えなさい」って。
その模範解答が、かなり的を射ていて、
感動&爆笑でした(* ̄m ̄) ププッ
投稿: つたまる | 2008年11月 9日 (日) 04:21
つたまるさん☆おはようございます
その本面白そうですねぇ。
わたしも読んでみようっと。(^o^)/
投稿: Roko | 2008年11月 9日 (日) 10:18
井坂好太郎は、伊坂さん自身も挿絵担当の人も出版社の人もきっと楽しんで設定したんじゃないかなぁ~と思います。
国家とかシステムとか考えると閉塞感がありましたが、そこで自分らしくあろうとする登場人物たちの姿勢は良かったです。佳代子さんが強烈な印象を残してくれました(笑)
投稿: エビノート | 2008年11月11日 (火) 20:30
エビノートさん☆こんばんは
佳代子さん強すぎです!(>_<)
井坂さんのファンサイトには笑っちゃいました。
こんなところまで凝ってるなぁって感心してしまいました。
投稿: Roko | 2008年11月11日 (火) 23:31
伊坂さんの前職ってシステムエンジニアだったんですね。
こだわりが感じられました。
佳代子さんがすごすぎて、驚きでした。
勇気の出番、見逃さないようにしたいものです。
http://1iki.blog19.fc2.com/blog-entry-609.html
投稿: 藍色 | 2008年11月12日 (水) 02:52
藍色さん☆おはようございます
「勇気」をしまっておいちゃいけませんね。(*^^)v
でも佳代子さんレベルまで行っちゃうと、凄過ぎますねぇ。
投稿: Roko | 2008年11月12日 (水) 08:04
こんにちは。
私も「人生は要約できねえんだよ」が印象に残りました。
もはや「検索」なしでは生活できない体になってます。
ちょっと考えないといけないのかしら。
投稿: なな | 2008年11月24日 (月) 13:57
ななさん☆こんにちは
検索した言葉がたまたまヒットしちゃっただけで命を狙われたらと思うと、怖いですねぇ!(゚o゚)/
そんな未来が来ないようにと祈ってます。
投稿: Roko | 2008年11月24日 (月) 17:17
こんにちは!
勇気を実家に忘れてくる…
名言ですねぇ(笑
今度使おうと思ってます。
ゴールデンスランバーもしかり、世の中はやっぱり管理されてるんだと実感!?
ありえる話ですからねぇ。
投稿: じゅずじ | 2009年1月21日 (水) 10:00
じゅずじさん☆こんばんは
社会から管理されなくても、自主的に規制してしまうのが好きな日本人にとって、こういう世界って現実感ありますよね。
勇気は実家のどこに隠して あるんですか?
なんて世の中はイヤですよ~!
投稿: Roko(じゅずじさんへ) | 2009年1月21日 (水) 22:19
検索で監視されてるって恐ろしいですよね。
そしてそれがありえそうなところがもっと恐ろしいです。
今は何でもすぐに検索してしまいますから。
それで思ったんですが、自分のPCの検索履歴を誰かに見られたら、くだらない検索してるのとかばれていやだなぁと。。
検索履歴でその人というのが結構浮かび上がるかもしれません。
投稿: june | 2009年3月10日 (火) 16:57
juneさん☆こんばんは
PCの履歴は見られたくないですねぇ (-_-;)
特定の検索をしたというだけで疑われちゃたまらないけれど、そういう時代も来るかもしれないって思えましたね。
投稿: Roko(juneさんへ) | 2009年3月10日 (火) 20:55
こんにちは!管理社会とか政治のことだとかを考えると気が滅入っちゃうのですが、数々の名言が勢いがあって重たい雰囲気を吹き飛ばしてくれました。
私も検索履歴を見られるのは恥ずかしいかもなぁ・・・別に変な言葉で検索してないけれど、なんだか恥ずかしいです。(苦笑)やっぱり作中の禁断の検索ワードで検索してみるべきですか!?ドキドキ。
投稿: 板栗香 | 2009年3月15日 (日) 10:34
板栗香さん☆こんにちは
すでにweb上で怖いことは起きているそうですが、将来はどうなっていくんでしょうね?
でも、この本で登場した「禁断の検索ワード」は検索してみてくださいね。(*^^)b
投稿: Roko(板栗香さんへ) | 2009年3月15日 (日) 16:58
こんばんわ。TBさせていただきました。
面白かったですねぇ。
この50年後の世界は実際にもありそうで怖いです。
私も調べる時って検索してしまうので。
「魔王」の潤也や詩織が登場して嬉しかったです。
ちゃんと若いときの決意を成し遂げていたんですね。
検索、私もして見ました。
面白かったです。
講談社、やりますね^^
投稿: 苗坊 | 2009年4月 1日 (水) 23:36
苗坊さん☆検索しましたね~!
こういう隠し技は歓迎ですね。(*^^)v
50年経っても日本のサラリーマンは、相変わらず残業してるのかと思ったら、ちょっと悲しかったです。
それにしても奥さんは強過ぎ~でした!
投稿: Roko(苗坊さんへ) | 2009年4月 2日 (木) 21:33
Rokoさん こんばんは
人生は要約できねえんだよ
最高ーです!!!
でも怖くて井坂好太郎と播磨崎中学校では
検索できません 笑
投稿: yori | 2010年7月 5日 (月) 23:40
yoriさん☆おはようございます
「魔王」とのつながりがあったり、名言があったり、やっぱり伊坂さんっていいなぁって思ってしまう作品でした。
勇気を実家に忘れて来たのでなければ、あの検索を、ぜひぜひやってみてください。
投稿: Roko(yoriさんへ) | 2010年7月 6日 (火) 08:05