ブログ内検索


  • ダメでもいいからやれ。
    体験もしないでお前ら、
    すぐに「ダメだ」って言うのは、
    学校で聞いただけの話だろう。
    やってみもせんで何を言っとるか
    (by 本田宗一郎)

読書Love!

  • 本が好き!
  • NetGalleyJP
    プロフェッショナルな読者
    グッドレビュアー 100作品のレビュー 80%

« 映画 「マルタのやさしい刺繍」 | トップページ | オバマ次期大統領の演説を聴きましたか? »

『モダンタイムス』 伊坂幸太郎

モダンタイムス (Morning NOVELS)
伊坂 幸太郎
講談社

 実家に忘れてきました。何を?勇気を。(本文より)

 拓海(たくみ)くんが自分のマンションへ帰ってみると、知らない男が待っていたのです。その男に殴られ、椅子に縛りつけられてしまいました。そして、その男がこういったのです。

 「勇気はあるか?」

 この男からやっと解放されたかと思えば、今度は会社でとんでもない仕事をやれと言われてしまいます。拓海くんは、どうもトラブルに巻き込まれやすい体質みたいです。

 拓海くんの職業であるシステムエンジニアは、伊坂さんの前職でもあります。システムエンジニアって、新しい職業ではあるけれど職人気質もあるし、オタク的な要素もあって、不思議なこだわりがある、ちょっと変な人が多い職種ですよね。

 この本のタイトルになっている「モダンタイムス」「ダイハード」「クロウ」など、映画に関する話が色々登場しました。この本で描かれている21世紀後半に、こういう映画を知っている人達って、けっこうマニアックな人たちですよね。

 そして「井坂好太郎」という作家が登場してくるのですが、この人がなかなかの曲者です。どこまで本気なんだか、冗談なんだか分からない発言が多いし、どんなに忙しくてもきれいなお姉さんには弱いし、かなり楽しんで作ったキャラだなぁって思いました。

 この名前についてはあとがきで「これは単純に、小説家の名前を考えることが億劫になり、自分の筆名を変形させたに過ぎません。」と言っているけれど、こういう形で登場してくるのて、映画のカメオ出演のような感じで、伊坂さん自身も楽しんでるってことなんじゃないかなぁ?

 今回も様々な名言がありましたが、わたしが一番気に入ったのはこれです。

 人生は要約できねえんだよ

 たとえば「チャップリンってどんな人だったの?」と聞かれて、「たくさん映画を作った人」とか「主演も、作曲もしたんだよ」とか他人には断片的なことしか分かりません。

 どんな子供時代を送り、どんな友達がいて、どんな家庭生活を送り、どんな悩みがあって、どんな趣味があったのか?いろんな要素がその人を構成しているのに、他の人から見えるのは、その中のほんの一握りの部分でしかないのです。

 自分では「これこそがわたしだ!」と思っていても、人からはそう見えていなかったり、人からは「あなたはこういう人だ!」と思われていても、本人は全然気が付いていなかったり、人間というのは究極のブラックボックスなのかもしれません。

 追い詰められて初めて発揮される「火事場の馬鹿力」みたいなものって、わたしの中にもきっとあるんだろうなぁって、ラストの方を読みながら思ってしまいました。

 勇気はきっと、出番を待っているのです。

P.S. 井坂好太郎 とか 播磨崎中学校 とかで検索してみようねぇ!

946冊目(今年129冊目))☆☆☆☆☆

トラックバック先
粋な提案
まったり読書日記
分厚い壁の小さな穴
しんちゃんの買い物帳
ナナメモ
アン・バランス・ダイアリー
じゅずじの旦那
本のある生活
マロンカフェ
苗坊の徒然日記
活字の砂漠で溺れたい

« 映画 「マルタのやさしい刺繍」 | トップページ | オバマ次期大統領の演説を聴きましたか? »

日本の作家 あ行」カテゴリの記事

コメント

おお!
「人生は要約できねえんだよ」で、
あたしが中学時代に読んだ
『国語入試問題必勝法』(清水義範)を
思い出しました(* ̄m ̄) ププッ

これは中学生には強烈でした★
オチになるから、言わない方が良いのかなぁ・・・。

おばあちゃん(だったと思う・・・)が
回想シーンを交えつつこれから息を引き取るのだけれども(ちがうかも??)、
そこで入試問題が問うのね。
「おばあちゃんの今の気持ちを、十文字以内で答えなさい」って。

その模範解答が、かなり的を射ていて、
感動&爆笑でした(* ̄m ̄) ププッ

つたまるさん☆おはようございます
その本面白そうですねぇ。
わたしも読んでみようっと。(^o^)/

井坂好太郎は、伊坂さん自身も挿絵担当の人も出版社の人もきっと楽しんで設定したんじゃないかなぁ~と思います。
国家とかシステムとか考えると閉塞感がありましたが、そこで自分らしくあろうとする登場人物たちの姿勢は良かったです。佳代子さんが強烈な印象を残してくれました(笑)

エビノートさん☆こんばんは
佳代子さん強すぎです!(>_<)
井坂さんのファンサイトには笑っちゃいました。
こんなところまで凝ってるなぁって感心してしまいました。

伊坂さんの前職ってシステムエンジニアだったんですね。
こだわりが感じられました。
佳代子さんがすごすぎて、驚きでした。
勇気の出番、見逃さないようにしたいものです。

http://1iki.blog19.fc2.com/blog-entry-609.html

藍色さん☆おはようございます
「勇気」をしまっておいちゃいけませんね。(*^^)v
でも佳代子さんレベルまで行っちゃうと、凄過ぎますねぇ。

こんにちは。
私も「人生は要約できねえんだよ」が印象に残りました。
もはや「検索」なしでは生活できない体になってます。
ちょっと考えないといけないのかしら。

ななさん☆こんにちは
検索した言葉がたまたまヒットしちゃっただけで命を狙われたらと思うと、怖いですねぇ!(゚o゚)/
そんな未来が来ないようにと祈ってます。

こんにちは!

勇気を実家に忘れてくる…
名言ですねぇ(笑
今度使おうと思ってます。

ゴールデンスランバーもしかり、世の中はやっぱり管理されてるんだと実感!?
ありえる話ですからねぇ。

じゅずじさん☆こんばんは
社会から管理されなくても、自主的に規制してしまうのが好きな日本人にとって、こういう世界って現実感ありますよね。
勇気は実家のどこに隠して あるんですか?
なんて世の中はイヤですよ~!

検索で監視されてるって恐ろしいですよね。
そしてそれがありえそうなところがもっと恐ろしいです。
今は何でもすぐに検索してしまいますから。
それで思ったんですが、自分のPCの検索履歴を誰かに見られたら、くだらない検索してるのとかばれていやだなぁと。。
検索履歴でその人というのが結構浮かび上がるかもしれません。

juneさん☆こんばんは
PCの履歴は見られたくないですねぇ (-_-;)
特定の検索をしたというだけで疑われちゃたまらないけれど、そういう時代も来るかもしれないって思えましたね。

こんにちは!管理社会とか政治のことだとかを考えると気が滅入っちゃうのですが、数々の名言が勢いがあって重たい雰囲気を吹き飛ばしてくれました。
私も検索履歴を見られるのは恥ずかしいかもなぁ・・・別に変な言葉で検索してないけれど、なんだか恥ずかしいです。(苦笑)やっぱり作中の禁断の検索ワードで検索してみるべきですか!?ドキドキ。

板栗香さん☆こんにちは
すでにweb上で怖いことは起きているそうですが、将来はどうなっていくんでしょうね?
でも、この本で登場した「禁断の検索ワード」は検索してみてくださいね。(*^^)b

こんばんわ。TBさせていただきました。
面白かったですねぇ。
この50年後の世界は実際にもありそうで怖いです。
私も調べる時って検索してしまうので。
「魔王」の潤也や詩織が登場して嬉しかったです。
ちゃんと若いときの決意を成し遂げていたんですね。

検索、私もして見ました。
面白かったです。
講談社、やりますね^^

苗坊さん☆検索しましたね~!
こういう隠し技は歓迎ですね。(*^^)v
50年経っても日本のサラリーマンは、相変わらず残業してるのかと思ったら、ちょっと悲しかったです。
それにしても奥さんは強過ぎ~でした!

Rokoさん こんばんは
人生は要約できねえんだよ
最高ーです!!!
でも怖くて井坂好太郎と播磨崎中学校では
検索できません 笑

yoriさん☆おはようございます
「魔王」とのつながりがあったり、名言があったり、やっぱり伊坂さんっていいなぁって思ってしまう作品でした。
勇気を実家に忘れて来たのでなければ、あの検索を、ぜひぜひやってみてください。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『モダンタイムス』 伊坂幸太郎:

» モダンタイムス 〔伊坂 幸太郎〕 [まったり読書日記]
モダンタイムス (Morning NOVELS)伊坂 幸太郎講談社 2008-10-15売り上げランキング : 80おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools ≪内容≫ 検索から、監視が始まる。 漫画週刊誌「モーニング」で連載された伊坂作品 最長1200枚 岡本猛はいきなり現われ脅す。「勇...... [続きを読む]

» モダンタイムス 伊坂幸太郎 [粋な提案]
モダンタイムス (Morning NOVELS)(2008/10/15)伊坂 幸太郎商品詳細を見る 写真は畠山直哉。装幀は松田行正+相馬敬徳。「モーニング」連載に加筆修正。... [続きを読む]

» モダンタイムス [分厚い壁の小さな穴]
忙しくて最近全然本が読めなかったけど ようやく伊坂幸太郎の最新刊モダンタイムスを読み終えました。 前作ゴールデンスランバーが伊坂幸太郎の集大成のような傑作で しかもド派手なエンターテイメント小説だったので 今作は地味で暗い印象でした。 週間連載のせいか、いつものテンポよさがあまり見られず、やや冗長気味でした。 しかしメッセージ性は強く 人間がシステムの一部に組み込まれていくだとか 情報が氾濫して真実がわからなくなるだとか 近未... [続きを読む]

» 「モダンタイムス」伊坂幸太郎 [ナナメモ]
モダンタイムス (Morning NOVELS) 伊坂 幸太郎 JUGEMテーマ:読書 検索から、監視が始まる。漫画週刊誌「モーニング」で連載された伊坂作品 最長1200枚。 「人は知らないものにぶつかった時、まず何をするか?『検索するんだよ』」五反田の言う言葉ですが、本当にそうなんです。今朝も息子が何か質問してきたんだけど、それが私の知らないことだったので「後でコンピューターで調べてあげる」って言いました。そしてこの本の事思い出してちょっと怖くなった。 「魔王」から50年... [続きを読む]

» 「モダンタイムス」伊坂幸太郎 [本のある生活]
モダンタイムス (Morning NOVELS)クチコミを見る 抗うことのできない大きな力のあるものに監視され、逃れることができないというのが「ゴールデンスランバー」に似ていると思いながら読んだのですが、途中で「魔王」の続編というか、魔王の世界のその後の話なのだと気付き...... [続きを読む]

» 意志の在処 [活字の砂漠で溺れたい]
世間的には安定した人気を誇る作家だが、 私的にはとても当たり外れの激しい作家である。 良い時は無茶苦茶良いが、外した時はどうにもならない 笑 前回読んだのはビートルズの名曲と同じタイトルを用いた 「ゴールデン・スランバー」 この時には本当に良い時の伊坂幸太郎....... [続きを読む]

« 映画 「マルタのやさしい刺繍」 | トップページ | オバマ次期大統領の演説を聴きましたか? »