『ばかもの』 絲山秋子
2人が出会ったとき、ヒデは大学生、額子は30にもうすぐ手が届くくらいの歳だったらしい。一緒にいる時には気付かなかったけれど、額子がいなくなってから、その存在の大きさにヒデはうろたえてしまったのだと思う。
人を好きになるのって不思議なことですねぇ。良い人だから好きになるってわけじゃないし、「あんな奴のどこがいい?」と思いつつも別れられなかったり。別れてから大好きだったことに気づいたり。大好きなのに会うと悪口ばっかり言ってしまったり。
好きでもない人から告白されて、「ゴメン、タイプじゃないんだ」と言っても分かってもらえなかったり。「まぁ、いいか」と軽い気持ちで付き合ってみたら、すっごく良い人だったり。
素直に「好き」とか「愛してる」って言えたら楽なのにね。それを言えないばっかりに分かれてしまうことだってあるのよ。誤解を恐れずに相手に伝えた方がいいと思うなぁ。”I Love You” って。
素敵と思う理想の人と、現実の人間のギャップってのは絶対にあるものよね。生身の人間なんだもの、凄くイジワルだったり、意気地なしだったり、いい加減だったりするのよ、相手も、自分も。
でもさ、そういうところもひっくるめて好きになるってことが「愛」なんだと思うんだなぁ。とんでもない「ばかもの」がわたしは好きだよ。だってわたしのことを好きだなんていうバカなんだから。
954冊目(今年137冊目)
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内容説明
気ままな大学生と、強気な年上の彼女。すべてを失い、行き場をなくした2人が見つけた、ふるえるような愛…。絶望の果てに響く、愛しい愚か者たちの声を鮮烈に描き出す、恋愛長篇。... [続きを読む]
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「ばかもの」ってタイトル、絲山さんらしいです。突き放しているようで、どこか突き放しきれない優しさがあります。絶望的な話なのだけれど、最後に感じる小さなあたたかさ。よかったです。
絶望の果てに響く、短く不器用な、愛の言葉。待望....... [続きを読む]
恋してるときって後で振り返ると自分がとんでもないばかものに見えますが、別にそうでもないときでもばかものであるわけで。
わたしもそんなばかものである自分が好きで、だからこそ他のばかものも愛していきたいです^^
今のわたしは他人に求めてばっかりな気がするので…(^^ゞ
投稿: まみみ | 2009年1月 7日 (水) 23:39
まみみさん☆こんばんは
周りのことなんか考えずに突っ走っていると、人からはばかに見えるでしょう。
後になってみれば、自分でもばかだなぁと思うでしょう。
待つことも大事だけど、追いかけることも大事だと思うのです。
投稿: Roko(まみみさんへ) | 2009年1月 7日 (水) 23:56
人を好きになる時って「ばかもの」になっちゃいますよね。
ずるずるとアル中に・・というのは、さすがにばかだなぁと思ってしまいますが、特段の理由のなさとか逆にリアルで怖かったです。
投稿: june | 2009年2月 7日 (土) 18:51
juneさん☆こんばんは
気がつかないのは本人だけってこと、よくあります。
ふとしたきっかけで取り返しがつかないことになってしまうことって、本当に怖いですよね。
投稿: Roko(juneさんへ) | 2009年2月 7日 (土) 21:30