『T型フォード殺人事件』 広瀬正
世界で初めて「流れ作業」で作られた工業製品が「T型フォード」です。ティン・リジーとも呼ばれていたこの車が、この物語の主人公です。1923年の関東大震災後、壊れてしまった市電の代わりにT型フォードを改造した「円太郎バス」が東京の街を走っていたということは、この本の中でも語られていました。
この物語は推理小説なのですが、古いフィルムの映写機や活動写真、そして自動車の話が沢山登場して、わたしにとってはノスタルジーを楽しんだという気分です。
この作品が広瀬さんの遺作となりました。
この本の2番目に収められている「殺そうとした」が作家としての処女作品なのだそうです。これも車がらみのミステリーです。
3番目の「立体交差」は「マイナスゼロ」を彷彿とさせるSF作品です。過去から見た未来って不思議なものだらけで、まるで別の星へ行ってしまったような気持になるのでしょうね。
これが復刊した広瀬さんの5冊目の本です。だから残るはあと1冊。ワクワクするような、お名残り惜しいような、複雑な気持ちです。
958冊目(今年141冊目)
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» 「T型フォード殺人事件」 広瀬 正 [日々の書付]
昭和40年代。コレクター泉氏の家でクラッシックカー「T型フォード」のお披露目として同好の士を招いたパーティーが開かれた。作家の白瀬、大学教授の早乙女、自動車整備士の二郎、そしてT型フォードの提供者疋田医師が招かれ、その他、泉の娘ユカリとその婚約者ロバートが加わる。
宴の途中、疋田医師からこのT型フォードにまつわる過去の事件が明かされる。それは45年前、疋田医師の叔母、麻利子が因縁となった殺人事件だった…
T型フォード殺人事件―広瀬正・小説全集〈5〉 (集英社文庫)
今まで広瀬さ... [続きを読む]
これって、いったいどういう話になるのか、なかなかわからない、ずいぶんと凝った作品でした。
これが遺作というから、次はないのかと思ったら、「タイムマシンの作り方」とかいうのが出ましたね。
なんか、感想を書くのが溜まってしまい、どこかでなんとかしないと…。正月に追いつきたいものです。
投稿: ディック | 2008年12月17日 (水) 23:05
ディックさん☆あと一冊ですね。
お正月にまとめて記事をアップですか?
楽しみにしてまーす。
投稿: Roko | 2008年12月18日 (木) 21:22
Rokoさんへ
「T型フォード殺人事件」は本格的なミステリでしたね。ラストのトリックにはびっくりさせられました。それと、フィルムの映像や車の描写が詳細で、古いフィルムに車が走っているのが見えるようです。
「立体交差」は1984年の小さな未来予測もおもしろかったです。サンマが貴重品であったり、女性の髪の色が派手になったり、現代では一部当たっていますね。
投稿: 日月 | 2009年7月28日 (火) 14:40
日月さん☆こんばんは
広瀬さんの車に対する愛着は凄いですよね。
モデラーとしても超一流だったそうですから、細部にこだわったのは当然なのかもしれません。
投稿: Roko(日月さんへ) | 2009年7月28日 (火) 22:43