『どこから行っても遠い町』 川上弘美
この表紙いいなぁ、谷内六郎さんの絵はいつ見ても心惹かれてしまいます。窓の外にいる男の人は誰なんでしょうか。知っている人?それとも知らない人?子供のころは大きく見えたおじさんなのに。自分が大人になってみると、それほどでもないんだなぁって気づいちゃったり。
この物語に登場する人たちは小さな町で暮らしています。それぞれ勝手に生きているようでいて、どこかでそっとつながっている感じが、ジワジワっと伝わってきます。
恋愛結婚したからといって、その情熱がいつまでも続くわけではないし、お見合いだから情熱的じゃないってわけでもないし、人と人との巡りあわせって不思議です。偶然に出会ったようでいて、すべての出会いは運命なのかもしれません。
もちろんみんな、人はそれぞれに違っている。みんなでいる時は「みんな」という規格からはずれないように、違わないように、心をくばって、でもほんとうは、「人それぞれの違い」はちゃんとある。(本文より)
誰一人として同じ人生を歩んでいないのに、まるでそんなことは無かったかのように「ふつう」の顔をして生きている人の多いこと!そういう顔に騙されちゃいけませんよ!よく話を聞いてみると、みんながビックリするようなことを、いとも簡単にやっている人が多いんだから!
この人のどこにそんな強さがあるのか?と驚かされる人もいれば、今までどうして何もやらずに来ちゃったの?と、その消極性に驚かされる人もいます。
人は皆、自分が普通だと思っています。1億人いれば、1億人分の自分らしさがあるんです。他の人の自分らしさをマネするもよし、無視するもよし、それを決めるのは自分なんですから。
980冊目(今年15冊目)☆☆☆☆
« 『バナナは皮を食う - 暮しの手帖 昭和の「食」ベストエッセイ集』 檀ふみ選 | トップページ | 『ヘタリア』 日丸屋秀和 »
「日本の作家 か行」カテゴリの記事
- 『山の上の家事学校』 近藤史恵 25-99-3495(2025.04.12)
- 『なぜヒトだけが幸せになれないのか』 小林武彦 25-111-3507(2025.04.24)
- 『非効率思考 相手の心を動かす最高の伝え方』 黒田剛 25-97-3493(2025.04.10)
- 『無敵のハンディキャップ』 北島行徳 25-98-3494(2025.04.11)
- 『蔦重の教え』 車浮代 25-74-3470(2025.03.19)
コメント
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 『どこから行っても遠い町』 川上弘美:
» どこから行っても遠い町 [まっしろな気持ち]
記憶が淡くはらはらとこぼれ落ちる。そのあやういほどの輪郭をたよりに、どこまでも近くどこまでも遠い場所を探しあぐねる。いくら追いかけてもたどり着けないもどかしさと、知れば知るほどにどこかぼやけてゆく情景がここにはある。そのぼやけた情景に身を委ねて浸る心地よさったらないのだ。東京の東にある小さな商店街と、その町に暮らす人々を描いた十一の連作短篇集である、川上弘美著『どこから行っても遠い町』(新潮社)... [続きを読む]
» どこから行っても遠い町 / 川上弘美 [読書発電所Annex]
どこかの遠い町の11編のお話。 この11編はまったく関係ない話ではなく、話中の [続きを読む]
« 『バナナは皮を食う - 暮しの手帖 昭和の「食」ベストエッセイ集』 檀ふみ選 | トップページ | 『ヘタリア』 日丸屋秀和 »
川上さん、
結局コレしか読んでない・・・
http://tsutamaru.cocolog-nifty.com/blog/cat14681512/index.html
作風は、かなり好きなんだけどなぁ。。。
今年は、果敢にチャレンジしていきます!!
φ(.. ) カキカキ
投稿: つたまる | 2009年1月30日 (金) 01:26
こんばんは。
人は見かけによらないってこと、
ありますよね。
みんなが簡単にやっているようなことをできてなくて、
ビックリされる人に当てはまりそうです。
他の人の自分らしさをマネするところから
始めてみようかなって思います。
http://1iki.blog19.fc2.com/blog-entry-635.html
投稿: 藍色 | 2009年1月30日 (金) 03:14
つたまるさん☆チャレンジ~!
椰子椰子が好きなんですか?
他のも是非読んでみてくださいね。
投稿: Roko(つたまるさんへ) | 2009年1月30日 (金) 08:02
藍色さん☆おはようございます。
他の人のマネをしてみて、意外な発見をすることもあるし、マネが出来ない自分にビックリすることもあります。
面白い見本になる人、近くにいますか?
投稿: Roko(藍色さんへ) | 2009年1月30日 (金) 08:05
Rokoさん、こんにちは。
表紙。とても素敵ですよね。
ここにも何か物語があるように感じます。
どこかで誰かとつながっている…そう思うと、
なんだかほっこりした気持ちになります。
投稿: ましろ | 2009年1月31日 (土) 15:30
ましろさん☆こんばんは
>どこかで誰かとつながってる
みんな一人で生きているんじゃないということに気づくと、自然と優しくなれますよね。(*^^)v
投稿: Roko(ましろさんへ) | 2009年1月31日 (土) 21:07
人の繋がりって、あんまり無いようでいても、細いけどしっかりしたものがあったりしますよね。
その繋がりが色々と絡み合って、いろんな話があって...
ps.私もこの表紙の絵は気に入ってます。
投稿: yomikaki | 2009年1月31日 (土) 23:09
yomikakiさん☆こんばんは
人の縁ってどこで決まるのでしょうね?
不思議な縁のある人って確かにいますもの。
わたしにとって谷内六郎さんの絵は、懐かしさのシンボルです。
子供の頃、この絵の女の子と同じような服を着てたなぁ~、なんて気持になってしまうのです。
投稿: Roko(yomikakiさんへ) | 2009年1月31日 (土) 23:46
Rokoさん、こんばんは♪
TB失敗かな(汗)
この作品心地よいですよね。
まるで最終編を読んだあとに、読者自身が12編目を演じているような錯覚に陥りました。
最後の真紀さんの登場が本当に物語を引き締めたのだと思います。
川上さんの作品なんか英訳してもその良さが出にくいでしょうね。
日本の作品の良さを示す象徴的な作家かなと思います。
投稿: トラキチ | 2009年4月14日 (火) 23:12
トラキチさん☆こんばんは
川上さんの世界観は翻訳不可能でしょうね。
不思議な展開にも何故か頷いてしまうのは、その心地よさのせいでしょうか?
投稿: Roko(トラキチさんへ) | 2009年4月15日 (水) 00:23