『大奥 第2巻』 よしながふみ そして 『ブッダ 第2巻』 手塚治虫
第1巻は8代将軍「吉宗」の時代でしたが、この第2巻では3代将軍「家光」の時代に遡っています。
日本全国に流行った病のために男性の人口が驚異的に減り、男中心の世界を維持することが困難となってしまった時代の始まりを描いています。
将軍が亡くなり、気が付いたらその大役を背負わなければならなくなってしまった千恵姫、出家していたのに、むりやり還俗させられてしまった有功(ありこと)、全く違う世界からやってきた2人の運命の出会いです。
絶対的な権力によって人生を変えられてしまった2人は、日本で一番偉い人と、その側近なのに、これっぽちの自由もない籠の鳥のような生活を送っていて、何だか切なかったなぁ。どんなにきれいな着物を着て、美味しいものを食べていても、それだけじゃね。
武士の家に生まれたけれど、多くの人を助けるには仏門に入ることの方が意味があると考えて出家した有功なのに、大奥という閉ざされた世界でしか生きることができなくなってしまった彼の苦悩はさぞかし大きかったでしょう。
この第2巻を読んだすぐ後に読んだのが「ブッダ 第2巻 四門出遊」です。王家の長男として生まれ、王子として何不自由ない生活を約束されていたのに、そんな自分に疑問を持ち、家族を捨てて修行の旅へ出るという物語です。
この時点では彼はまだブッダではなくシッダルタという一人の青年です。誰にも理解してもらえない悩み、苦しみをどこにぶつけていいのか分からずにいる彼にとって、王になるとか、豊かな暮らしなどは何の魅力も持っていなかったのです。
この2人は、もちろん仏教というものを通じてつながっているのですが、悩める青年という意味でも似ているような気がします。
誰にだって悩みはあるけれど、それに本気でぶつかっていく勇気がある人はなかなかいません。「まぁ、いいや」でその場はしのげても、結局はまたぶつかってしまいます。悩むこと、考えること、やってみること、それこそが修行なのかもしれません。
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