『猫を抱いて象と泳ぐ』 小川洋子
デパートの屋上にやって来た小象のインディラはとても人気がありました。そこにいるのはしばらくの間で、その後は動物園に引き渡そうと思っていたのに、大きくなり過ぎて屋上から降りることができなくなってしまったのです。
そして、壁と壁の隙間に挟まって出られなくなった少女、ミイラ。少年の友だちはインディラとミイラの二人だけでした。そんな孤独な少年はチェスと出会います。それが彼の人生を決定してしまったのです。
日本ではなじみの薄いチェスの世界を描いた物語なのに、そんなことなどまるで気にならないというか、知らない世界だからこそイメージが広がる美しい物語でした。
チェスの対戦中に何度も出てきた、チェスの駒の動かし方で、その人がどんな人なのか分かってしまうというのは怖いなぁと思いました。勝敗を喜んだり悲しんだりするだけでなく、チェスを通した出会いをどれだけ楽しめているのかどうかまで分かってしまうなんて!
人生がチェスであり、チェスをすることによって生かされていた主人公の人生は、きっと幸せだったのでしょうね。有名になったり、大きな世界を目指す事より、美しいチェスをしたいと願った彼の生き方は、誰にも真似のできない世界を作り出していました。
小川さんへのインタビュー記事 も素敵でした。
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» 『猫を抱いて象と泳ぐ』 小川洋子 (文芸春秋) [続 活字中毒日記]
<かつてこれほどもの哀しくて美しい物語があっただろうか、追憶の一冊。>
まず最初に本作の感想を書くにあたって、物語と作者の文章があまりにも素晴らし過ぎて感想が上手く紡げないというジレンマに陥ったことを書き留めておいて駄文ながら綴りたいと思う。
初出誌 「文學界」2008年7月号〜9月号。
約3年ぶりに小川さんの作品を手に取った。
彼女の作品は有名どころの3作品(『博士の愛した数式』『ブラフマンの埋葬』『ミーナの行進』)しか読んでいないが、どれもが素晴らしく心に残る作品であった。
そ... [続きを読む]
» 「猫を抱いて象と泳ぐ」静かで熱い唯一の物語を読む幸せ [soramove]
「猫を抱いて象と泳ぐ」★★★★★満点!
小川洋子著
「タイトルを考える、
猫を抱くことは出来るが
象と泳ぐことはできそうにない、
猫を抱いて泳ぐのも難しそうだ、
しかしこの本を読むと
その不思議な光景が目に浮かんでくる」
主人公は幼い頃、
動かないバスで暮らす友達から
チェスを教えてもらう、
その後、彼は「盤上の詩人」と謳われた
アレクサンドロ・アリョーヒンという
ロシアの伝説のチェスプレイヤーにちなんで
リトル・アリョーヒンと呼ばれるようになる。... [続きを読む]
» 猫を抱いて象と泳ぐ 〔小川 洋子〕 [まったり読書日記]
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≪内容≫
伝説のチェスプレーヤー、リトル・アリョーヒンの密やかな奇跡。
触れ合うことも、語り合うことさえできないのに…大切な人にそっと囁きかけたくな....... [続きを読む]
» 小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』 [itchy1976の日記]
猫を抱いて象と泳ぐ小川 洋子文藝春秋このアイテムの詳細を見る
今回は、小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』を紹介します。本書は、チェスに生涯をささげることになったリトル・アリョーヒンの一生を描いた小説です。全体的には彼をはじめ登場人物が温かいなと思う。彼のチェスはシンフォニーを奏でるように共鳴しあっている。そういうのをチェス盤の海に身を任せるというのであろうか。
○本書の構成
1章から6章:マスターからチェスを教えてもらう。
7章から12章:パシフィック・海底チェス倶楽部でチェスの対局をする。
13章... [続きを読む]
Rokoさん、こんばんは♪
TBさせていただきました。
この作品、素晴らしいですよね。
私的には本作のような作品が翻訳され、世界中の人々に読まれたらもっと日本文学の価値が上がるような気がしました。
いろいろ読みたい本があってなかなか追いつかないけど、少しつづでも読んでコンプリートしたい作家さんですよね。
将棋は取った駒をまた使えますが、チェスは使えません。
そこが儚さを助長してるのでしょうね(笑)
投稿: トラキチ | 2009年5月 6日 (水) 19:50
トラキチさん☆こんばんは
小川さんの作品を読んでいると、翻訳もののような気持になってしまうことがよくあります。
小川さんのインタビューサイトの中で、日本一のチェス刺しは羽生名人だと書かれていたのを見て、妙に納得してしまいました。
投稿: Roko(トラキチさんへ) | 2009年5月 6日 (水) 20:38
こんにちは。TBとカキコありがとうございました。
素敵な話でした。
チェスのルールは全く分からないのですが、チェスから醸し出される美しい世界を堪能したように思います。
最後は本当に切なかったです。
投稿: 苗坊 | 2009年6月27日 (土) 13:30
苗坊さん☆こんばんは
チェスを勝負としてではなく美学としてとらえていたリトル・アリョーヒンの生き方は素敵でした。
最後は切ないけど、美しい物語でしたね。
投稿: Roko(苗坊さんへ) | 2009年6月27日 (土) 23:33
Rokoさん、こんばんわ。
この1冊の中にこんなにすごい世界が広がっているとは想像もできませんでした。本当に美しくて悲しくてあたたかな物語でした。
リトル・アリョーヒンの人生は、チェスと出会い、チェスを通じて素晴らしい出会いがあったのだから、私も幸せだったと思います。
投稿: june | 2009年8月18日 (火) 21:00
juneさん☆おはようございます
小川さんの小説はいつも独特なのですが、これもまた独特で美しい世界観でした。
チェスに出会ったことによって人生が決定したリトル・アリョーヒン、彼は実に幸せだったのだとわたしも思います。
投稿: Roko(juneさんへ) | 2009年8月19日 (水) 08:17
Rokoさん、こんばんは。
読む前はよく分からなかったタイトル、読み終えてからはこれ以外にないというものに思えました。
無限の広がりを持つチェスの世界を旅したアリョーヒンの人生はとても豊かなものでしたね。
投稿: エビノート | 2009年12月29日 (火) 21:32
エビノートさん☆こんばんは
ほんとに絶妙なタイトルでしたね。
チェスのために生きていたアリョーヒンの姿は、一つの美学だったのだと思えて仕方ありません。
投稿: Roko(エビノートさんへ) | 2009年12月29日 (火) 21:49
こんにちは。
冒頭のインディラとミイラのエピソードでガッツリとハートをわしづかみにされてしまいました。
私もチェスのことは知らないんですが、さほど苦にならずこの世界観を楽しめました。
この本にめぐり合えたことが幸せ、と思える本でしたね。
投稿: ia. | 2010年5月12日 (水) 13:44
ia.さん☆こんばんは
インディラの話は、不思議に懐かしい気持ちになってしまいました。
自分が納得できる生き方をするって事の大事さを感じる本でした。
投稿: Roko(ia.さんへ) | 2010年5月12日 (水) 22:26
Rokoさん こんにちは
>チェスの駒の動かし方で、
>その人がどんな人なのか分かってしまう
麻雀に性格が出る、というのとはまったく話が違いますね 笑
切なくて優しい素敵な小説でした。
投稿: yori | 2011年4月 9日 (土) 18:07
yoriさん☆麻雀だって同じですよ(#^.^#)
何を大事にして生きていくのか?という事を考えさせられる小説でしたね。
最終的に求めるのが美しさであるというのは実に素敵ですね!
こんな世界を作り出すことができる小川さんって、スゴイ人ですね。
投稿: Roko(yoriさんへ) | 2011年4月 9日 (土) 19:17