『赤めだか』 立川談春
談春さんの師匠、立川談志という人は天才だとわたしは信じております。図抜けた才能を持ち、なおかつ努力を惜しまない人です。(一見そうは見えないけどね)そんな師匠に弟子入りした談春さんは、良くも悪くも師匠に振り回されていきます。
よく芸は盗むものだと云うがあれは嘘だ。盗む方にもキャリアが必要なんだ。最初は俺が教えた通り覚えれればいい。盗めるようになりゃ一人前だ。時間がかかるんだ。教える方に論理がないからそういういいかげんなことを云うんだ。
何だか分からないけど昔からそうなってるからこうやれ!なんて言う人が多い中、こうやって、ちゃんと理屈を教えてくれる師匠ってありがたいですよねぇ。弟子入りして最初にこう言われちゃったら、「はい、ついていきます!」ですよねぇ。
型ができていない者が芝居をすると型なしになる。メチャクチャだ。型がしっかりした奴がオリジナリティを押し出せば型破りになれる。
わたしが子どもだったころ「笑点」で座布団を運んでいたのは「石井伊吉」というウルトラマンにも出ていた役者さんだったんです。司会をしていた談志師匠が名付け親になって、1968年12月から「毒蝮三太夫」へ改名したんです。
それまでは真面目なイメージしかなかった彼が、名前を変えてから文字通り型を破ったんですよね。どんなに毒舌を吐いても受け入れられるのは、一本筋の通った人だからなのでしょうね。
やるなと云っても、やる奴はやる。やれと云ったところでやらん奴はやらん
はい、おっしゃる通りです。m(_ _)m
談春さんはやると思ったら突っ走るタイプなので、談志師匠とはぶつかることもあったけど、どこか似たところがあったんでしょうね。若いころには分からなかった師匠の良さが、弟子を持った今はよく分かり、感謝しているというセリフには泣かされます。
師弟関係とは恋愛にたとえるのが一番わかりやすい
大好きな師匠に気に入られたい、ほめられたいと思うのだけど、それがなかなか上手くいかなくて逆に怒らせてしまったり。緊張して変なことをやってしまったり。バカな弟子のふるまいにあきれつつも、しょうがないなぁと笑ってしまったり。
そうか、師弟関係というのはそういうものなのですね。悩みもあれば、あきらめもあり、腹の探り合いもあり、でも最後は愛なのだと、とても納得できてしまいました。
談春さんの落語を是非聞いてみたいなぁ~と思いました。こういう人なら絶対に面白い話を聞かせてくれるだろうなぁ!
1016冊目(今年51冊目)
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