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『進化倫理学入門』 内藤淳

 ディックさんのところで見つけたこの本、読みながら「そうなんだぁ~!」と思う点が度々ありました。「進化倫理学」って説得力がありますねぇ。

 子孫を残すために有利な条件を持っている物が残るというのが、進化論の考え方ですよね。これはとっても分かりやすい理論だと思います。

 たとえば、寒いところで生き残るには毛皮を身にまとっていたり、高体温を維持できたりするものが生き残りやすい。水分が少ないところで生き残るには、身体の表面から水分が逃げないようになっているものや、地中で暮らすものが有利であるってことですよね。

 自分自身が生き残り、子孫を残すのが生物としての基本的な使命です。そのためにはどうすればいいのでしょうか?みんなと協調することが大事なのか?それとも自分の意思を貫くことが大事なのか?これは、いつの時代にも問われ続けている問題です。

 この本のサブタイトルにもなっている「『利己的』なのが結局、正しい」という理論が、この本の中で説明されていきます。

 ほとんどの人間は常に自分に有利になることを欲しています。この利己的な行動というのは、短期的な意味では「自分のことばっかり!」と取られがちですが、実はそうではないんです。

 「相手に好印象を残しつつ、自分に有利になる行動を取る」という長期的な意味での「利己的」であることこそが正しいのです。

 「嘘をついてはいけない」「人のものを取ってはいけない」などの道徳的な約束事は、すべてこれで説明できてしまいます。短期的には得なように見えても、後になってから得ではないことになってしまっては意味がないんです。

 たとえば、詐欺を働いて大金を掴んだとします。短期的にはお金が自分のものになって得したという気持ちになります。でも、詐欺がバレたら刑務所に入ったり、賠償金を払うということになります。お金も信用もすべて失ってしまいます。

 つまり長期的に考えれば、悪いことをせずに生きていく方が自分のためになるという結論になります。

 確かにね、ズルいことをしてお金を儲けたり、出世しようとしたりしている人のことは、誰かが必ず見ていますから、絶対にバレないなんてことはないんですよね。いつかはツケを払わなければならないというリスクを忘れちゃいけません。

 「あなたのためを思って言ってるのよ」なんていうのも、考えてみれば詐欺ですよね。その気持ちの裏にあるものを感じ取られてしまうから、聞き入れてもらえないんです。

 自分はどうしたいのか?建前じゃなく本音の方で生きていくこと、つまり正直であること、素直であること、それこそが「利己的」な生き方なのですね。

1028冊目(今年63冊目)

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コメント

読まれましたか…。
強い説得力がありましたね。人間の行動原理はたぶんこんなことではないかな、という気はしていましたが、理路整然と倫理道徳の起源を述べられると、神を出してきたり、あるいは社会契約のような説明をされるよりも、余程すっと納得します。

ディックさん☆こんばんは
人類が存続するために我々は生かされているのであり、その使命を果たすには「利己的」であることが大事である。というこの本のテーマは実に分かりやすかったです。
そんな使命を持ったわたしたち、ムダに時間を過ごしてちゃいけませんね。

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