『ツールへの道』 今中大介
この本はツール・ド・フランスの期間中に読みたいと思ったのです。
TV画面から見る選手の姿と、実際に走っている彼らの肉体、そして心の動きがどう連動しているのかが、少し分かったような気持ちになる本でした。
著者の今中さんは1994年にイタリアのポルティというプロチームに入りました。その時点ではイタリア語も分からず、とにかく習うより慣れろという気持でヨーロッパの自転車ロードレースの世界へ飛び込んで行ったのです。
この本は後から回想して書いたものではありません。毎日毎日どんな練習をした、どこのレースに出場した、食事はどうだったという日記なのです。
日本では一番であっても、ヨーロッパのチームに入れば普通の選手です。エースを助けるアシストとして過酷なレースを連戦します。暑い夏も辛いけど、寒い季節のレースの方が今中さんにとっては、より辛かったようですね。
寒さに耐えるために、身体に油を塗り、レースウェアの上に防寒用の衣類を重ね着し、砂糖が入った暖かい紅茶を飲み、というような記述を読むほどにその厳しさを感じました。
今年のツール・ド・フランスには、今中さんが出場してから13年ぶりに2選手が出場しています。昔よりも海外で活躍する選手が増え、ロードレースの認知度が日本でも少々上がってきました。でも、まだまだマイナースポーツです。
3週間のツール期間中、ずっとキャンピングカーで追っかけたり、自国の選手のために旗を振ったりする人をTV画面で見るたびに羨ましいなぁと思っていました。今年は2選手の為に日の丸を振っている人がいます!そういう夏休みを過ごせる人は幸せだなぁって思います。
国の旗だけでなく、その地方の旗を振る人が多いのにもビックリします。カタルーニャやバスクの旗とか、テキサス州の旗(これはランス・アームストロング用)とか、地域のヒーローをこうやって称えるのって、とっても素敵だなぁ!
スポーツに限らず、音楽でも、何かの技術でも、日本から飛び出していこうとする人の勇気ってスゴイです。そういう人たちの足跡を知ることで、少しでも応援になれればいいなぁと思います。
1045冊目(今年80冊目)
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