『f植物園の巣穴』 梨木果歩
幼いころ、住込みのねえやだった千代。若くして亡くなった妻の千代。ふと気になって入ってみた洋食屋の千代。どうして千代という名の女ばかり自分の周りに集まってくるのか?
歯医者へ行ってみれば、医者の手伝いをしている前世が犬だったという「家内」は、時々犬になっている。大家さんも時々鶏になっている。いつもの道を歩いているつもりなのに、違う道に出てしまったり。
不思議なことが次々と起こり、最初は面喰っていた主人公が、段々と「こんなものだ」「これは夢なのだ」と思うようになっていくのです。
ずっと昔のことを何かの拍子に思い出すことがあります。そのきっかけは何かの匂いだったり、音だったりするのだけど、それが自分の頭の中の何かにピタッとはまった時、突然思い出すのです。
それは台風の前の生暖かい風だったり、ごはんが炊ける匂いだったり、鈴虫の声だったり、洗濯屋さんがアイロンがけをする蒸気だったり。
すぅっと自分が過去のある時点に戻ってしまいます。そして、見つけるんです。自分を作り上げたものが何だったのかということを。
1066冊目(今年101冊目)
« 『ラーメン屋の行列を横目にまぼろしの味を求めて歩く』 勝見洋一 | トップページ | Fashion's Night Out »
「日本の作家 な行」カテゴリの記事
- 『二十四五』 乗代雄介 25-12-3408(2025.01.14)
- 『Buying Some Gloves(手袋を買いに)』 新美南吉 マイケル・ブレーズ 訳 24-355-3381(2024.12.15)
- 『朝読みのライスおばさん』 長江優子 みずうちさとみ 24-336-3362(2024.11.26)
- 『小さな出版社のつづけ方』 永江朗 24-284-3310(2024.10.05)
- 『小さな出版社のつくり方』 永江朗 24-271-3297(2024.09.22)
コメント
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 『f植物園の巣穴』 梨木果歩:
» f植物園の巣穴/梨木果歩 [ディックの本棚]
f植物園の巣穴
妻が亡くなり三回忌の翌日、転任の話があって、私はf植物園の技官になった。水生植物園が担当だ。河川工事の関係か、池のように残され湿地化した一画が放置されていたのを、自分なりになんとか再生したい、と情熱を注いでいる。
歯が痛みだし、f郷歯科...... [続きを読む]
« 『ラーメン屋の行列を横目にまぼろしの味を求めて歩く』 勝見洋一 | トップページ | Fashion's Night Out »
こちらの感想を読んでその気になってきました。
しばらく梨木さんから離れていましたが、読んでみようと思います。
投稿: ディック | 2009年9月23日 (水) 21:51
ディックさん☆こんばんは
わたしも梨木さんの作品は久しぶりだったのですが、やっぱり惹き込まれてしまいました。
こういう気持にさせてくれる作家さんは、やっぱり大事ですねぇ。
投稿: Roko(ディックさんへ) | 2009年9月23日 (水) 22:16
わあ、ごめんなさい。
そうか、こんなコメントが残っていましたか。
7ヶ月間かけて、やっとご紹介いただいた本を読むことができた、ということのようです。
久しぶりに梨木さんの世界を堪能いたしました。
投稿: ディック | 2010年5月 9日 (日) 20:02
ディックさん☆こんばんは
時代を感じるような文体も、この作品のイメージを広げていたような気がします。
梨木さんは、やっぱりいいですねぇ!
投稿: Roko(ディックさんへ) | 2010年5月10日 (月) 00:24