『差別と日本人』 辛淑玉、野中広務
わたしは怒っています。こんな事があってもいいものなんですか?という事ばかりが世の中には多過ぎるのです。これまでわたしが知らなかった差別がこんなにも現存しているということを知って、いたたまれない気持になっています。
この本の中で語られている部落差別、在日の人たちに対する差別は、余りに理不尽なものです。なのに何故無くならないのかといえば、差別をする側には何の痛みもないものだからなのです。自分たちが酷いことをしているという意識すらないから、是正されることがないのです。
わたしが子供のころ、そういう差別が世の中にあるということは薄々感じていました。「あの家族は朝鮮人だから」なんて会話を聞いたことはあったけど、日常でそういうことを意識するってことはまずなかったんです。あの日までは。
あれは中学生の時、お休みの先生の代わりに自習を監督しに来た先生がこう言ったんです「○○くん、日本人じゃないから大変だろうけど、がんばってね!」
ビックリしましたよ!だって、そんなこと殆どの人が知らなかったんだもの。「エッ、○○くんって日本の名前なのに、よその国の人なの?それに、先生そんなことみんなの前で言っていいの?」
後になって冷静に考えてみたら、担任でもない先生がどうしてそこまで知っていたのかってことも問題ですよね。きっと先生同士の話で知ったんだろうけど、ヒドイ話ですよ。教育者ですら、その程度の認識だったんですよね。
この本に書かれている事実を知るにつれ、どんどん怒りが膨らんできます。日本を動かしている人たちの差別意識は酷過ぎです!
特に麻生太郎前総理に関しては、酷過ぎて俄かには信じられないほどです。
麻生財閥を構成する企業の一つ、麻生鉱業は、強制連行されてきた朝鮮人を強制労働につかせ、消耗品の労働力として、その命を紙屑のように扱った。1945年までに麻生系の炭鉱に連行された朝鮮人は1万人を超える。賠償は今に至るまで行われておらず、遺骨さえまだ遺族のもとに戻っていない。また、麻生炭鉱は部落民を一般の労働者と分け、部落民専用の長屋に入れて奴隷のように酷使した。(本文より)
彼が初めて選挙に出た時、福岡の飯塚の駅前で、「下々の皆さん」って演説した。これが批判を受けて選挙に落ちたんだ。彼はずうっとそういう感覚なんですよね。(野中)
飯塚って在日も部落の人もたくさん住んでいるところですからね。(辛)
何の疑問もなしにそう言うんだ。不幸な人だ。一国のトップに立つべき人じゃない。(野中)
投票するにあたって、その人がどんな人であるか?きちんとした考えを持っているかどうか?なんてことじゃなく、有名な人、家柄のいい人を選んでるだけだってことこそが問題なのです。
野中氏が足を踏み入れることになった自民党は、学識を必要としない社会だった。いわんや世界観や、理想や、見識や、文化的視座や政策科学的合理性などまったく必要ない。「自民党」とはつまり、選挙での的など、手っ取り早く攻撃可能な相手を見つけては、とにかくこれを叩くことでのし上がってきた人たちの集団である。
なるほどなぁ、だから野中さんも、田中角栄も自民党には存在し得たんですね。のし上がるパワーがある人なら誰でもいらっしゃいというスタンスだっかったから自民党は大きくなったのだと。
でも、今の自民党は自力でのし上がった人たちではなく、地盤を引き継いだ2代目・3代目ばかりになってしまたので、その中でより毛並みのいい人を担ぐしかなかったのだと。そう考えると麻生首相が誕生してしまったのもよく分かります。
自分が被差別側の人間であると公言してしまったために家族に迷惑をかけていると、お2人とも真剣に悩んでいます。間違ったことをしているわけではないのに、家族や親戚に被害が及ぶというのは悲しい事実です。
日本はまだまだ差別だらけの国です。これを変えていくのは、みんなの意識なんです。みんなが平等な世界を望むことこそが、平等な社会を作る第一歩なのです。
1080冊目(今年115冊目)☆☆☆☆☆☆(辛いけど、これが事実なんです)
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