『わたしを離さないで』 カズオ・イシグロ
自他共に認める優秀な介護人キャシー・Hは、提供者と呼ばれる人々を世話している。キャシーが生まれ育った施設へールシャムの仲間も提供者だ。(裏表紙の説明より)
キャシーが暮らす寄宿舎には、子ども達がたくさんいました。規則正しい生活を送り、勉強し、絵を描き、大人になるための準備をしていたのです。
運命が辛いものだと思うのは、実は他人の事だからかもしれません。その当人にとってはそれが当たり前、もちろん悩むこともあるでしょうが、悩んだからと言って運命が変わるわけでなし。案外淡々と運命を受け入れてしまうものなのではありませんか。
キャシーをはじめ、へールシャムで育った子ども達には厳しい運命が待っていました。何でそんなことを?誰が決めたの?どうして止められないの?と思うような運命です。でも、彼らは静かにそれを受け入れているのです。
どんな国に生まれるのか?どんな親の元に生まれるのか?どんな時代に生まれるのか?そこから運命は始まります。
どんなに豊かな時代、豊かな国家、豊かな親の元に生まれようが、満たされない人生を過ごす人もいます。
他人からは悲劇と思われるような生い立ちでも、心満たされた人生を歩む人もいます。
どんな悩みも、それが自分を高めるためのものだと思えば前進していけるのだと信じたい。そんな気持ちになる物語でした。カズオ・イシグロの描く物語は、どうしてこんなにすばらしいのでしょうか。
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