NHK 世界のドキュメンタリー ソウル・ディープ 第2回 ゴスペルからソウルへ
ブラックミュージックのルーツのひとつであるゴスペルは、教会音楽として黒人社会の中で確立した音楽です。ですから1960年代初頭までは、ゴスペルとポピュラー音楽は一線を画したものでした。
ゴスペル・ロードと呼ばれる地方巡業をするミュージシャンが増え、少しずつ人気を広めていきました。とはいえ、聴衆は黒人のみ。旅の途中で白人に嫌がらせを受けることは、日常のことでした。
その壁を破ったのがサム・クックでした。ゴスペル歌手がポピュラーな音楽をやるなんて!という保守的な声が多い中、ゴスペルだけを歌っていては本当の意味でのミュージシャンとして認められることはないと考えた彼は、故郷のシカゴを離れ、L.A.へ向かったのです。
今ではゴスペル出身でポピュラー界へ進出するというのは当たり前のルートですが、サムが活躍していた50年前には考えられないことだったんですね。ゴスペルというのは神に捧げるものであって、お金を稼ぐためのものではないという考え方が一般的だったとは!
ゴスペルを歌う男声コーラスの場合、カルテット(5人組)が多かったという事を初めて知りました。2人がリードを取り、後の3人がコーラスや合の手を入れるというスタイルは、その後のスタイリスティックスやジャクソン5にも影響を与えているんだそうです。
音楽の権利、人権といったことに力を入れて活動をしていたサムはモハメッド・アリ(カシアス・クレイ)ととても仲が良かったんですね。2人で歌っている映像を見ると、まるで兄弟のようです。
1964年にサムは射殺されてしまいます。これに関しては様々な陰謀説も飛び交っています。彼がその後も生きていたら、音楽界も公民権運動のあり方も、かなり変わっていたでしょうね。
BBC 2003年制作 原題:SOUL DEEP GOSPEL HIGHWAY
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