『中国報道の「裏」を読め!』 富坂聰
中国では「小噺メール」というのがあって、面白い噺があれば次々と転送されていくのだそうだ。これも、そんな「小噺メール」の一つ。
貧乏なころは豚を飼っていたのに、リッチになると犬を飼う。
貧乏なころは道路で自転車を漕いでいたのに、リッチになると家の中で自転車を漕ぐ。
貧乏なころは結婚をしたがり、リッチになると離婚したがる。
貧乏なころは妻に秘書をさせていたのに、リッチになると秘書に妻の役割をさせたがる。
貧乏なころは金持ちのふりをしていたのに、リッチになると貧乏人を装う。
せっかくリッチになったのに、かえって悩みが増えてるのは何故。(^^ゞ
中国では多くの人たちが豊かになったけれど、他の国の人たちのように、何かしらの事業で成功を遂げてという話はさほどありません。お金を沢山持っているのは主に官僚たちです。
その地位を利用して多額の賄賂を受け取っているので、昇進話が出たとしても、自分が今恩恵を受けている立場を失う可能性があるなら、その昇進は断ってしまうというのです。
そのような利権を持っていない場合でも、政府やそれに関連する人々は多くの金を使っています。2004年の「華西都市報」によれば、全国の官僚が公費で飲み食いした金額は、分かっているだけで年間3700億元(約5兆5500億円)に上ったというのです。
さすがに、それはまずいと考えた一部の都市で、公費での飲み食いを禁じたことがあったのでそうです。ところが、その都市の美食街が軒並み潰れてしまったというのです。それほどまでに「公」の消費が大きいということなのです。
このスケールの大きさは一体何なのでしょうね?中国がやっているはずの社会主義とは、すべての国民に平等な生活をという考えのはずなのに、正反対の現実がそこにはあるのです。お金を持つ者と、持たない者の差がどんどん広がっていくばかり。
「山寨(シャンザイ)携帯電話」とは政府から正式な許可を受けていない携帯電話のことで、実体は正規のブランドメーカーのパクリである。そのために端末につけられたメーカーのロゴは、「SONG ERICSSON」「NOKIR」といったものが目立つ
そんなコピー商品でありながら、最新機能はほとんど遜色なく使え、見た目もほとんど変わらない「山寨携帯電話」の価格は、安いものでは正規ブランドの10分の1だというのです。正規品を買えない人々の間で爆発的に普及するのも無理はないわけです。
さらに凄いのがパソコン市場です。中国ではパソコンを買う際に、ウィンドウズなどのOSがインストールされていないものを買うのが一般的なのだそうです。なぜなら、最新版OSの海賊版が安価で出回っているからだというのです。
このように、中国ではコピーものがあっという間に市場に出回るので、どれが本物なのか分からなくなってしまうのです。これは携帯やPCだけでなく、薬やタバコ、酒なども同じで、一気に商品が市場に溢れるために、人々に飽きられてしまうという悪循環が起きるのです。
世界の生産工場となった中国では多くの労働者が働いています。コストダウンや、経営状態の向上のためにリストラをする企業ももちろんあります。そうすることによって失業者が増えると、国としては困るわけです。そこで、2008年1月1日に「労働契約法」が施行されました。
この法律の中に、「同じ企業で勤続10年以上の従業員に対し、企業は”期間を限定しない労働契約を新たに結ばなければならない”」という一文があります。つまり、10年以上働いた従業員には終身雇用を保証しなさいということです。
中国内の企業は、これに対してすぐに動きました。この法律が施行される前に、大規模なリストラが行われたのです。長期雇用などしたら後が怖いというわけです。更に、法律施行後は派遣会社を通して人材を確保するようになったのです。本人と直接契約しなければ、この法律は適用されないというのです。
企業の都合だけが優先してしまい、個人の能力や尊厳などどうでもいいという考え方を良しとしてしまっている社会では、負のサイクルが進むばかりです。
ここでもう一度叫びたくなります。中国って社会主義じゃなかったっけ?
中国の報道は、国の検閲を通しているのだから、国にとって都合のいいことしか流さないのだと、わたしはこれまで思っていました。そういう部分は確かに多いけれど、そうでない部分もかなりあるのだということを、この本は教えてくれました。
中国が大国であるのは間違いありません。広大な国土を持ち、様々な人種を抱え、多くの人口を持ち、長い歴史も持っています。
国家としては大国であっても、個人レベルでの満足感、幸福感はまた別のものです。中国の人たちは、自分が幸福であると思える生活をしているのでしょうか?
そんなわたしの疑問に答えてくれる情報を、これからの中国の報道は伝えてくれるのでしょうか?
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「海角七号」をグーグルで見ていたらROKOさんのブログに出くわしました。
日本の報道は中国に関してもアメリカに関しても非常に偏向しているか、全くの勉強不足だと思います。中国とは1970年代から関わっています。中国はアメリカよりも超資本主義の国です。毛沢東が目指した社会主義には恐らく日本が一番近いでしょうね。もしかしたら日本はエリック・ホッファー言うところの全体主義にむかっているかも知れませんが、、。
投稿: 三鷹の隠居 | 2010年1月13日 (水) 11:07
三鷹の隠居さん☆はじめまして
この本の中でも、中国人が「日本こそ社会主義の国だ!」と言っている所がありました。
中国がここまで資本主義とは、ビックリしました!
こういうことを日本の報道はちっとも教えてくれませんね。
日本の報道自体が固定観念を持ってしまってるからなのでしょうか?
ニュースなども鵜呑みにしてはまずいなぁと思います。
これからもよろしくお願いします。m(__)m
投稿: Roko(三鷹の隠居さんへ) | 2010年1月13日 (水) 23:32