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『インドのことはインド人に聞け!』 中島岳志

 インドと聞くと「ヨガ」と「象」と「カレー」というようなイメージしか持っていない人が殆どじゃありませんか?ちょっと新しいデータを持っている人でも「インド数学」とか「IT技術者」「アユールベーダ」「ボリウッド映画」ってところかな?

 普通の日本人が持っているインドの情報って、ホントに少ないです。首相の名前も首都の名前だってちゃんと知らない人がほとんどですもの。

 この本で紹介されている現在のインドの状況の中で一番の驚きは「ゲーテッド・コミュニティ」です。いわば高級住宅地なのですが、その徹底ぶりが凄いのです。鉄条網付きの高い塀で囲まれ、そこに警備員が常駐し、外界とは完全に遮断されているのです。

 道路や樹木などは専門の人間がメンテナンスし、家にも会社にもエアコンが完備し、車で通勤する彼らには、外の世界にいる別のカーストの人間がどんな生活をしているのかを見ることなど全くないのです。

 同じような生活レベルの人たちとだけ付き合い、世の中の汚いところは見ないで済んでしまう場所を作り上げてしまったのです。それが理想的だとする考え方は、余りにも危険過ぎないでしょうか?

 そんな中で育った子供たちは、当然のように勉強を強いられます。豊かさが当たり前、快適な生活が当たり前である彼らは、親から与えられたレールの上を歩き続けています。

 もし、そのレールから外れたら?別の選択肢を想像することができない彼らが進む先は、「うつ」であり「自殺」なのです。貧しい時には考えもしなかった「自殺」が、豊かな生活ゆえに増えてしまっているなんて、日本社会とそっくりな泥沼にはまってしまっているのです。

 インドで一番の問題であるのは、間違いなく「カースト」です。法律ではカーストは撤廃されたことになっていますが、カーストによる差別が根強く残っています。つまり「気にしているのは差別される側だけ」であり、「差別する側はそれを何とも思っていない」のです。

 カーストから逃れるために、ヒンズー教から仏教やキリスト教に改宗する人がかなりいるのだそうです。改宗によって生まれ変わらなければ救われない人が多いというのは、悲しい事実です。だから、それを実行できる人は、まだ恵まれている人なのかもしれません。

 わたしたち日本人の、インドに関する知識ってかなり偏っているというか、実は何も知らないと思えるようなことが沢山あります。

 たとえば、日本ではヨガを体験したことがある人はかなりいると思いますが、最近まで普通のインド人はヨガをしていませんでした。ヨガとは修行をする人だけのものだったんですね。でも現代のインドでは、ストレス解消やダイエットのためにスポーツクラブなどでヨガを習う人が増えているのだそうです。ヨガだけでなく太極拳やインド舞踊を習う人も増えている、つまり健康指向する人が増えているわけです。

 食事も伝統的インド料理だけでなく、冷凍食品やファーストフードも増えています。健康食品も増え、日本食もスーパーで買えるほど普及しているのだそうです。

 そして、もう1つのブームが「美容」です。これまでは家庭のことを第一に考えていたインド人たちも、自分のことを気にする余裕が出てきたからでしょうか、ストレスや老化に歯止めを掛けようと、美容に対する消費が増えているのだそうです。

 「インド人は英語ができる」というのも、わたしたちの勝手な思い込みだったようです。地方に住んでいるインド人の場合、英語で授業を受けたことがない人がほとんどなのだそうです。なので「英語」が壁になってしまってる人が多いのだとか。

 「婚活」もインドでは盛んなのだそうです。これまでは親が決めた相手と結婚するのが普通でした。現代のインド青年たちは、カーストや家柄ではなく、人柄で結婚相手を決めたいと考え、ネットで結婚相手を探す「出会い系」を大いに活用しているのだそうです。

 この本の中には、日本人が知らないインドのことが沢山登場します。でも、その半分以上が「日本と同じ悩み」であることに愕然としてしまいました。これまで遠い国、謎の国と思っていたのは、ただの思い込みだったのですね。

 世の中の変化に置いて行かれる人たち、流れに上手く乗る人たち、最初はちょっとした差であったものが、気がついた時には大きな差になってしまいます。様々な問題をかかえつつも、インドの存在は着実に大きくなってきました。

 アメリカやヨーロッパばかりに目を向けていては、気付けないものが増えてきました。インドのことを知らないでいたら、明日の世界は見えてこないのです。

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1125冊目(今年3冊目)☆☆☆☆☆

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コメント

去年、映画「スラムドッグ$ミリオネア」の原作本や、インド仏教の最高指導者佐々井秀嶺師のことを書いた本などを読み、インドという国に興味を持ちました。この本も面白そうですね。
機会があったら読んでみたいです。

牛くんの母さん☆こんばんは
佐々井秀嶺師の本は是非読もうと思っています。
この本の作者、中島岳志さんの本はどれも面白いですよ。
「中村屋のボース」は結構オススメです。

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普段あまり意識することはないけれど、インドという国に対して抱いているイメージってどんなだろう…。 まずは、やっぱり、カレーの国(笑) インドカレーは大好きなので、どうしてもそのイメージは拭い去れない。 それから、ビジネス系ではIT系のアウトソーシング産業の隆... [続きを読む]

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