『Mr.Soul サム・クック』 ダニエル・ウルフ
先月NHKで見たドキュメンタリー「ソウル・ディープ」で、この本を書いたダニエル・ウルフさんがインタビューに答えていました。それを見てサム・クックに興味を持ったんです。
僕はある夜、ジョージアで、一晩仕事に穴をあけてしまった時の事を決して忘れないだろう。なぜそういうことになったかというと、僕は人種差別のバスに乗る気はなかったし、白人のタクシー運転手で僕を飛行場から町まで乗せようとする奴はいなかった。そして黒人のタクシー運転手は空港にタクシーを乗り入れることを禁止されていたからだ。(本文より)
サム・クックが活躍していた頃(約50年前)のアメリカでは、黒人たちに公民権はもとより、ありとあらゆる差別を受けていました。世の中のすべてのものに「白人用」と「黒人用」があったのです。音楽だって例外ではありませんでした。黒人は黒人用の音楽を聴き、白人は白人用の音楽を聴いていたのです。
その壁を取り払おうと、マーチン・ルーサー・キング牧師も、マルコムXも、カシアス・クレイ(モハメッド・アリ)も、サム・クックも努力を続けていたのです。
若い世代の白人の中にも、黒人による音楽を好む人たちが数多くいました。レコードを買って聞いているだけなら問題はなかったのですが、黒人アーティストのコンサート会場に白人がやってくるようになると、やっかいな問題が出てきたのです。
同じ会場でも、1Fは白人用、2Fは黒人用と分けられたり、会場の真ん中にロープを張って、黒人客と白人客を分けて収容しなければいけないなんていう、バカバカしい決まりまであったんです。
人種隔離されたアリーナでは歌わない。
サムはその壁を乗り越えた最初の人でした。そんな彼が亡くなったのは1964年。L.A.のサウスセントラルのモーテルの管理人バーサ・フランクリンに射殺されたのです。この事件は正当防衛ということで片付けられてしまったのです。サムが亡くなった18ヶ月後にバーサは亡くなっています。
この事件についての証言などを調査すればするほど、その殆どが虚偽であり、裏で何かが動いていたのではないかという憶測が広がっているのですが、今となってはすべては謎のままなのです。
この50年で、アメリカにおける黒人の社会進出は目覚ましいものがあります。とはいっても、まだマイノリティであることに変わりはありません。本当に平等な社会になるのは、いつのことなのでしょうか。
1135冊目(今年13冊目)☆☆☆☆☆
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コメント
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サム・クック、「You Send Me」、いいですね。大昔ですが、「Bring It On Home To Me」も仲間と演奏した記憶があります。
アメリカの社会ですが、日本では想像がつかないほど複雑です。差別にしてもいじめにしても強烈です。容赦ない。私の息子はNY郊外の公立学校に通ったのですが、スクールバスで日本人をからかう歌さえあるのですよ。スクールバスは子供たちだけの世界で残酷です。アメリカの教育の根幹は、子供たちに自尊心をうえつけることです。自尊心がないと生きていけないからです。
中国の格差社会はアメリカよりも激しい。アメリカや中国と比較すると、性善説にたつ日本は、まだまだ優しくて、かなりいい国なのですよ。
投稿: 三鷹の隠居 | 2010年2月 3日 (水) 06:04
三鷹の隠居さん☆おはようございます
日本人が持っている外国のイメージって間違っていることが余りにも多いですね。
世界一資本主義が進んでいるのが中国で、人種差別が一番きついのがアメリカ、そして社会主義が一番浸透しているのが日本です。
格差社会なんて言われているけど、アメリカや中国と比べればはるかにマシですよね。
投稿: Roko(三鷹の隠居さんへ) | 2010年2月 3日 (水) 08:07