『カレンダーから世界を見る』 中牧弘允
普段どんなカレンダーを使っていますか?西暦だけのもの、西暦+和暦のもの。六曜や月の満ち欠けが表示されているもの。日本で使われている暦だとほとんどがこんな感じですよね。でも、世界では様々な暦が使われているのです。
キリスト教は西暦、イスラム教はイスラム暦、ヒンドゥー今日はヒンドゥー歴というように、宗教や国や地域によって使用する暦自体が違っています。1年が始まる日も違えば、1年の日数も違います。暦に表示される祝祭日や季節の区切りの日も当然違うわけです。
仏教だったら、花まつり(ブッダの誕生日)があったり、カソリックだったらセント・パトリック・デイがあったり、独立記念日があったり、暦のバラエティはそれはそれは豊かなのです。
日本にいると、世界中が西暦で動いているような気がしてしまうけど、実際にはイスラム暦やヒンドゥー暦を使っている人口はかなり多いのです。
日本でも、戦前までは「紀元」という年の数え方が普通だったようです。昭和15年には、紀元2600年ということで、奉祝行事が盛大に行われたのだそうです。実はこれに合わせて東京オリンピックが行われる予定だったのですが、第二次世界大戦の為に幻になってしまったというのを皆さんはご存知でしょうか?
神武天皇が橿原の宮に即位した日、紀元前660年2月11日を紀元としているので、この日が紀元節(建国記念の日)となったのです。この数え方だと、今年2010年は紀元2670年ということになります。
ユダヤ教の紀元は、西暦でいうと紀元前3761年9月なので、現在はユダヤ暦5771年ということになります。台湾では中華民国が樹立された1912年が紀元(民国暦)ですし、北朝鮮では金日成が誕生した1912年が紀元(主体暦)というわけで、この2つの暦は同じ年が紀元になっています。
日本の暦で重要なのが「干支」です。「子(ね)」という文字は「了」(終わり)と「一」(はじめ)が統合するという意味で、干支という循環的時間の要の役割を果たしているのだそうです。そういう意味があったとは、これまで知りませんでした。
もう一つ面白いと思ったのは、日本での「亥年」は中国などでは「豚年」になるのだそうです。日本では「丙午(ひのえうま)」の女性は不吉だとして出生率が低くなるのですが、中国などでは逆に「金豚」の年に出生率が高くなるのだそうです。
※この「金」というのは日本の「十干(甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸)」と同じようなものです。
「金豚」は豚が多産であることから子宝に恵まれるということ、そして金運にも恵まれるという特別な年です。最近では2007年が「金豚」で、出生率がかなり高くなったようです。
最近よく見るようになった金の豚の貯金箱は、こういう意味もあったのだと、納得してしまいました。
毎日眺めている暦の中には、様々な情報が組み込まれています。日付と曜日だけあればいいやっていう人もいるけれど、それ以外のことの方が大事だなぁって思うことが増えてきました。「210日」や「220日」、節分、春分の日、大安、こういう情報こそが、暦の大事な部分なのではないかと思えてきました。
1157冊目(今年35冊目)☆☆☆☆☆
« 『エデン』 近藤 史恵 | トップページ | 『勇気の季節』 ロバート・B・パーカー »
「海外の文化」カテゴリの記事
- 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』 ブレイディみかこ(2021.10.01)
- 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』 ブレイディみかこ(2021.05.10)
- 『ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち』 ブレイディみかこ(2020.06.03)
- 『異国トーキョー漂流記』 高野 秀行(2014.08.05)
- 『移民の宴』 高野秀行(2013.02.22)
コメント