『老舗の流儀 - 戦後六十年あの本の新聞広告』 南陀楼綾繁
朝、新聞を読むときに、もちろんニュースも読みますが、わたしが一番熱心に読むのは本の広告です。最近ではネットで本の情報を得ることが増えていますけど、新聞広告からの情報もなかなかあなどれないんですよね。
新聞広告の切り抜きを持って本屋さんで本を探している人を時々見かけますが、それだけ見ている人が多いってことなのでしょうね。この本には、そんな新聞広告の歴史やエピソードが満載でした。
1905年、東京朝日新聞は、第一面の全面を出版広告にしたのだそうです。日露戦後から第一次世界大戦期にいたる時期の同紙では、全体の四分の一が出版広告だったというんですから、新聞における出版物の広告というのは重要なものだったんですね。
本のタイトルは大きく入れたいし、著者の写真やキャッチコピーも入れたいし、値段も著者名も忘れちゃいけないし、小さな枠の中で本の紹介をするのに、様々な努力が重ねられていたのです。
この本の中で紹介されていた「ルーツ」「14歳からの哲学」「日本人とユダヤ人」「ソフィーの世界」など、どれも懐かしかったです。そして、一番の注目は「植草甚一 スクラップ・ブック」でした。このシリーズを作った晶文社の方が、そんなことをしてたんだ!という驚きの発見もありました。
そして、読んでみたい本も何冊か見つかりました。たとえば、「清貧の思想」「甘えの構造」は、時代を超えた本であるようですね。
最後に、この言葉が深く心に残りました。
最近はネットが流行っていて、口コミで本が売れるといわれていますが、僕の感覚ではネットとは意外と使えません。情報が行き渡るのは早いのですが、いずれも浅いのです。一時的に話題になって売れたとしても、新しい情報が回るのも早いので、すぐに売れなくなります。僕は、出版というものは浅く広くではなく、どこまで深く掘り下げられるかという勝負だと思っています。面倒くさいかもしれないけれど、読者を一人一人つかんで自社のファンに育てていくような、また読者からも出版社に対して気軽に会話ができるような、そんな信頼関係が大切ではないでしょうか。(二玄社 代表取締役会長 渡邊隆男)
この本は 書評サイト 「本が好き!」 より提供して頂きました。どうもありがとうございました。
1175冊目(今年53冊目)☆☆☆☆
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