映画 「ソウル・パワー」
「キンシャサの奇跡」と称されたモハメド・アリ対ジョージ・フォアマンの対戦前に行われた、『ザイール'74』と題されたコンサートの存在は語られ続けていたが、それがいったいどういったものなのか全貌を知る手だては今まで存在しなかった。
それが、当時のアリの試合をドキュメントした『モハメド・アリかけがえのない日々』(1997年アカデミー賞ドキュメンタリー部門受賞)の編集担当だったジェフリー・レヴィ=ヒントの手により34年もの間、お倉入りとされていた125時間にわたるフィルムが編集され、蘇った。
とにかく出演アーティストが凄いんです!
ジェームス・ブラウン、ビル・ウィザース、B.B.キング、ザ・スピナーズ、セリア・クルース&ザ・ファニア・オール・スターズ、etc.
このイベントを開催するきっかけとなったボクシングの試合で華麗なる復活を遂げたモハメド・アリ、その後プロモーターとして悪名(?)を轟かせたドン・ キングも大いに語りまくっています。
当時ブラックミュージックは力を持ち始めていましたが、まだまだ人種の壁が大きかったこの時代に、これだけの大きなイベントを開催したこと自体、奇跡だったのかもしれません。
コンサートシーンはもちろん素晴らしいのですが、それ以外の部分もなかなか面白かったんです。アメリカからザイールへ移動する飛行機の中で歌うミュージシャンたちの嬉しそうな顔!やたらとハイテンションなオバハンがいるなぁと思ったら、セリア・クルース(代表曲はQuimbara)じゃありませんか!
リハーサルでダンスの確認をしているシスター・スレッジは可愛いし、B.B.キングはずっと笑いっぱなしだし、ミュージシャンたちの素顔が垣間見られるところも楽しかったです。
このイベントが企画された時点では、ボクシングの試合とコンサートは同じ時期に開催される予定だったのですが、フォアマン側の事情でボクシングの試合は2か月ほど後に延期されています。
ローマ・オリンピックで金メダルを取ったカシアス・クレイが、モハメド・アリと改名し、徴兵を拒否し、世界チャンピオンの資格をはく奪されたという事実は、当時の日本人にとっては全く訳の分からない話でした。
そんなアリがフォアマンと対戦するいうニュースは世界を駆け巡りました。この試合は世界中に中継され、当時わたしもTVで見た記憶があります。その後「キンシャサの奇跡」と呼ばれたこの試合は、モハメド・アリというボクサーを更に有名にしたのです。
この映画は音楽的にも魅力的だけど、ビッグ・マウスと呼ばれたモハメド・アリが何故そこまで語るようになったのかの背景が良く分かって、アメリカの黒人たちがいかに努力して今日の地位を手に入れたのかを知るという意味でも素晴らしい映画だと思います。
ブラック・ミュージックを愛する人は、全員この映画を見てください!彼らのパワーの源をきっと見つけられますよ!
監督:ジェフリー・レヴィ=ヒント
プロデューサー:デヴィッド・ソネンバーグ、レオン・ギャスト
原案:スチュワート・レヴァイン
音楽祭プロデューサー:ヒュー・マセケラ、スチュワート・レヴァイン
編集:デヴィッド・スミス
キャスト:ジェームス・ブラウン、ビル・ウィザース、B.B.キング、ザ・スピナーズ、セリア・クルース&ザ・ファニア・オール・スターズ、モハメド・アリ、ドン・キング、スチュワート・レヴァィン 他
アメリカ/93分/2008年
公式サイトは → こちら
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