『道徳という名の少年』 桜庭一樹
町で一番の美女が父なし子を産み落としたのはこの国には珍しい雪の降る夜のことで、雪など振ったのは数十年ぶりのことなのであまりの不吉さに教会の鐘が朝まで鳴りやまなかった。(本文より)
最初のこの文章を読んだとたんに、物語にどっぷりと引きずりこまれてしまいました。この美女が生んだ4人の子供と、その子孫の不思議な物語です。
美しい人は、ただそれだけで周りから注目されます。美しい人が着る服は素晴らしい服だと誉めそやされ、美しい人が歩けば、それを目で追う人は数知れず。美しい人になりたいと多くの人は望み、美しい人のもとへは多くの人が近付いてきます。
美しい人は必ずしも幸せとは限りません。でも、必ず不幸という訳でもありません。
まるで昔話のようなこの物語、グリム童話のように残酷で、でも目を離せないところは、やっぱり桜庭さんだなぁって感じです。
ひらひらしたフリルの付いたブラウスを着た道徳という名の少年は、どんな顔をしていたのかしら?
1208冊目(今年86冊目)☆☆☆☆☆
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こんにちは。TBさせていただきました。
私もこの本の世界にどっぷりとつかりました。
美しい女から生まれた子ども達はみんな美しいのに、みんなからだが太り、醜くなる病にかかる。
本当に、グリム童話のようでした。
桜庭さんじゃないと、描けないですよね。
投稿: 苗坊 | 2010年8月 2日 (月) 13:58
苗坊さん☆こんばんは
美しさゆえの傲慢さと残酷さが、見事に描かれてました。
大人のための童話という所が、いかにも桜庭さんって感じでしたね。、
投稿: Roko(苗坊さんへ) | 2010年8月 2日 (月) 22:50
こんばんは。
絵本かなと思ったら濃い内容だったのでびっくりしました。
でも童話って元々残酷だったり不道徳だったりするので、この手法はあんがいぴったりなのかもしれませんね。
たくさん読めてお得感があったのもgoodでした♪
投稿: ia. | 2010年8月 3日 (火) 23:16
i.a.さん☆こんばんは
挿絵も含めたトータルな作りが素晴らしいなぁと思いました。
こういうダークな世界もいいですよねぇ!
投稿: Roko(i.a.さんへ) | 2010年8月 3日 (火) 23:45
Rokoさん、ちょこっとお久しぶりです^^
これ、私も最近読みました。
凄い装丁でしたよねー。
大人の童話・・って感じで、短時間で読めて、なかなか濃厚?なお話でした。
私は表紙が少女の顔だと知らないで借りて、手元に来てびっくり!でした。
投稿: latifa | 2010年10月18日 (月) 09:17
latifaさん☆お久しぶりです
装丁も、挿絵も、ステキでしたねぇ~。
何と言ってもストーリーが濃厚で、よかったですぅ (^O^)/
こういう桜庭さんの世界、ダーイ好きです!
投稿: Roko(latifaさんへ) | 2010年10月18日 (月) 20:57