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『マグロ船で学んだ人生哲学』 齊藤正明 腹肉ツヤ子

 齋藤クンはマグロの鮮度保持剤を開発する仕事をしていました。彼はどちらかと言えば虚弱体質な草食系男子で、研究所で大人しく働いていたのですが、おっかない上司の指令でマグロ船に乗ることになってしまいました。

 それまでの斎藤クンは虚弱体質なだけでなく、思いっきりネガティブな性格だったんです。それを打破したくて自己啓発セミナーに大金をつぎ込んでいたりしていたんです。でも、ちっとも変わらない自分にあせりのようなものを感じていました。

 マグロ船に乗ったはいいけれど、体力はないし、何をしていいかわからないし、船酔いばかりしていた齋藤クン、恐る恐る漁師さんたちに話しかけるようになりました。

 肉体派で強面にしか見えない彼らと話をしていると、齋藤クンには想像もできないような答えが返ってくるんです。

 たとえば、

 「誰もできないような仕事がしてみたいんです」 と言えば、

 こんな答えが返ってきます。

 「それより誰にでもできることをきちんとやっちょるか?」

 やってません。m(__)m

 「親方、ボクの存在意義って何でしょうか?」

 「んなもんねえ!!」

 「起きたことには何か意味がある」のではなくて、「起きたことにどんな意味があるのかは、自分で決めればいい」のだということを船長さんに教わります。

 何をやってもダメだと思っていた自分が、いかに頭でっかちだったのかを諭された齋藤クンは、それまで内向き(自分のことばかり)だったことに気付き始めます。そして自分が持っている知識や智恵は外に発信すれば、やがては自分に帰ってくるということを学んだのです。

 この本の中で齋藤クンは、かなりダメダメに描かれてますが、この環境に放り込まれたら、ほとんどの人は齋藤クンと同じだと思います。辛いとすぐに逃げたがってしまう性格だった彼が、逃げられない状況に追い詰められたのが、かえって幸せだったのかもしれません。

 怖そうに見えて実は心優しい船長さんや漁師さんたちの暖かい心に触れて、斎藤クンは生まれ変わることができました。それぞれの良いところを見つけては褒める船長さんや先輩の漁師さんたちって、上司の鑑です。

 船の上では狭いところに大勢の人間がいるから、コミュニケーションが大事だし、楽天的でいないとやってられないんですね。それって、普通の会社でも家庭でも同じだと思います。同じメンバーが顔を突き合わせていることが多いのに、コミュニケーションが上手くいっていなかったら、それはツラいばっかりです。

 自分が何をしたらいいのか分からない人は、マグロ船に乗せてもらったらいいんじゃないですか?

 それくらい、マグロ船のみなさんはすてきな人ばっかりでした!

1219冊目(今年97冊目)☆☆☆☆☆

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