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『頑固のすすめ』 大橋巨泉、王貞治

Gankonosusume

頑固のすすめ

王貞治(おう さだはる)

大橋巨泉(おおはし きょせん)

角川書店

 わたしが子供のころ、スポーツ選手と言えばONでした。今だったらサッカーやバスケットやスケートの選手に憧れる子もたくさんいるけれど、当時は野球しかなかったんです。キャッチボールや三角ベースでの野球は、そこかしこでやってました。

 天真爛漫な長嶋さんのと、真面目な王さんのONコンビは、本当に両極端で面白い組み合わせでした。日本中の野球少年は、彼らに憧れ、いつかはあんな風に活躍したいという夢を持っていました。

 

要するにアメリカは、打ちゃいいんですよ。打ち方は関係ない。日本は打ち方から入るから。結果を見て、「おまえ打てるからいいじゃないか。そのまま行け」とは言わないんです。「おまえの打ち方はこうやりゃもっとよくなる」とか言って、結局、悪くしちゃうんです。長所をつぶしてしまうことが多い。(王)

 王さんは、やっぱり分かってる人なんですねぇ。何でも型にはめようとする日本のやり方じゃ、飛びぬけた選手は現れないってことを、ちゃんと分かってます。一人一人違う人間なんだから、それぞれが個性を発揮して、得意なことを伸ばしていけばいいんだってね。

 

人間、運の総量は同じ(巨泉)

 巨泉さんはTV界であれだけ人気を博していたのに、突然セミリタイアすると言い出した時にはビックリしました。でも、その理由を聞いてみると、なるほどなぁって思えます。今、調子いいからって調子に乗り過ぎちゃいけないよって考え方をする方だったんですね。

 これに関してはビートたけしも同じことを言ってました。「自分の運には限りがあるんだから、賭け事や下らないことに使っちゃ、もったいないよ」ってね。それを分かっているかどうかが、大きなことをできるかどうかの差なのかなぁと思います。

 

 高度経済成長を続けていた昭和の時代、一生懸命に働いてお金を稼いで、家や車を買ってという時代に、巨泉さんは全く違う方向を向いていました。働くばっかりじゃなく、趣味を楽しもうよ、スポーツも、エンターテイメントも、賭け事も、世の中には楽しいことが沢山あるんだから、いろいろやってみようよ!ってね。

 今では伝説になってしまった(!?)11PMは、巨泉さんの趣味そのものでした。ゴルフ、フィッシング、麻雀、お酒、ジャズ・・・大人になったら、こんなに楽しいことがあるんだなぁって、子供の頃のわたしは憧れ半分で見ていました。そういえば、由美かおるのTVデビューはこの番組でした。

 

 王さんと言えば、真面目な努力家というイメージがありますが、そこにはお父様の影響が大きかったんですね。日本というよその国へやってきて、そこで生きていくためには「技術を身に着けなければ」「日本人に手を上げてはいけない」というような信念を子供たちに伝えてきたのです。

 そんなお父様の信念を正しいと信じた王さんは、ご自分の信念を貫き通されています。日中国交回復の後、台湾のパスポートではアメリカへ行けないという事態になりました。台湾籍の方の多くが帰化された時に、王さんだけは台湾籍を変えませんでした。

 「どうして?」と巨泉さんに聞かれた王さんは、こう答えたのだそうです。

「私は日本でいちおう成功して、どこへ行くんでも外務省の方でちゃんとしてくれるから、今のパスポートで不自由しない。台湾では、王貞治は台湾の人なんだと考えている少年がたくさんいる。でも、ニュースで『王貞治、日本に帰化』と出たら、全員、台湾の少年の心が傷つく。私がちょっとこっちで不便すればいいことなら、台湾のままでいます。」

 

 いかにも王さんらしい選択です。

 王さんには3人お嬢さんがいて、理香さん、理恵さん、理沙さんと、3人とも「理」という字が入っています。何故同じ字を使ってるの?と巨泉さんが聞いたことがあるのだそうです。

 この「理」という字には「おまえの里は王だよ」という意味が込められているんです。

 これもまた、王さんだなぁってエピソードですねぇ。

 

 王さんも巨泉さんも、わたしにとって憧れの人です。まったく違うタイプだけど、どちらも頑固に自分の考えを通すという所に命を懸けているところがステキなんだなぁと、再確認してしまいました。

 

1225冊目(今年103冊目)☆☆☆☆

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コメント

子供の頃に大人に憧れるということが今の子供にあるんでしょうか?そんな憧れる大人に自分がなっているのでしょうか?
文化が子供寄りになってしまったのはいつからなんでしょうか?
だけど遊びたい大人が増えているのも事実。趣味と仕事を楽しんでいる大人が結構いますよね。

あ~広がりすぎてどうしよう

ゆみりんこさん☆こんにちは
趣味も仕事も全開でというのが理想ですねぇ!
趣味のない生活なんて考えられないもの。

それにしても、わたしにとっての憧れの大人って、みんな男性ばっかり、憧れの女性がいないのは何故なんだろう?

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