『のぼうの城』 和田竜
領主の長男で大男、普通だったら領民から怖がられることはあっても、馬鹿にされることはまずないであろう人なのに、「でくのぼう」だから「のぼう様」と呼ばれてしまう主人公、成田長親。それも陰口ではなくて、面と向かって呼ばれてしまい、それに返事までしてしまうという不思議さ加減。この人は一体どういう人なんだろう?と興味が湧いてしまいます。
侍なのに武術はからきしダメ、不器用だし、頭も悪そうだし、取り柄と言えば素直な所ぐらいかなぁなんて周りから思われていた彼の本当の力は意外なところにありました。
それは、ありのままの自分の姿をさらすという事だったのだと思います。武士だからと言って強がりを言う人が多い中、長親さんはいつも本心を出していました。悲しいと言っては泣き、怖い時には怯えた顔を見せ、そんな彼の姿にみんな心惹かれていたんですね。
この物語のクライマックスは忍城(おしじょう)に籠城し、石田光成の軍と戦う所なのですが、坂東武士の男らしさは気持ちがいいですねぇ。特定の人間が一騎打ちする場面では、それを他の全員で見ているなんて所もあって、戦をしながらも、どこかゆとりを感じました。
いわゆる時代劇のような硬さが少なくて、とても読みやすい本でしたね。野村萬斎主演で映画化されるそうですが、きっと面白いだろうなぁ!
1241冊目(今年119冊目)☆☆☆☆☆
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» 「のぼうの城」 和田 竜 [日々の書付]
大人気戦国小説「のぼうの城」を読みました。私は生来のひねくれ者なので、流行りの本を読むのにはやや抵抗があったのですが、「のぼうの城」は単純明快で面白かった。また、今まであまり知らなかった歴史に隠れた地方領主たちの様子も垣間見れたのもよかった。いわゆる「負け組」にあたる関東の小城・忍城が、豊臣秀吉という巨大権力に一矢を報いるためにたちあがるところが人の心をとらえるのでしょうね。もちろん、私も捉えられた一人です。「少人数が大多数を打ち負かす」、「愚鈍な人物が実は賢者」という設定って、日本人は大好きなんで... [続きを読む]
本当は人気の小説ってあまり好きではなかったのですが、「のぼうの城」は単純明快で面白かったです。
「大多数対少人数」とか「負け組が勝ち組に挑んで勝つ」とかは判官びいきの日本人が好む題材だなあ、とおもいつつも、はまってしまいました。
のぼう様はよくある「うつけのふり」をしているのではなく、変わらない愚直な正直さで敵も味方も惹きつけられる人物像がすてきですね!( ̄▽ ̄)
投稿: 日月 | 2010年11月30日 (火) 18:34
日月さん☆こんばんは
のぼう様のお人柄にみんなが付いてきてくれたのですから、すごいですよね!
映画化されたら、絶対に見に行こうと思ってます。
投稿: Roko(日月さんへ) | 2010年12月 1日 (水) 00:12