『ダンス・バイブル』 乗越 たかお
バレエとか、日本舞踊とか、いわば古典を継承している踊りの本は今までにもありましたけど、その時代時代での流行りのダンスについて、これだけ資料を集めた本ってないでしょうねぇ!とにかく著者の熱い思いに溢れた本です。
ポーズがダンスになる
ポーズを組み合わせていく「ボーギング」は比較的新しいダンスですけど、同じような考え方が20世紀初頭にもあったというのが驚きでした。菩薩観音やら、シヴァ神やら、仏様系のダンスって見てみたいです。
リズム体操がダンスを変える(リトミック)
リトミックって中学の体育の時間に習ったなぁ。ダンスのセンスがなくても踊れるダンスって所が革新的だったのだそうです。これを進化させるとエアロビクスになっていくのかなぁ?
舞踏の衝撃
それまでのダンスの概念を変えてしまった舞踏。山海塾の存在を知った時は、本当に衝撃的でしたねぇ!日本国内では否定的な意見が多かった舞踏が、海外で認められたとたんに日本でも騒がれるようになったのだそうです。これがモダンダンスに与えた影響は計り知れません。
ツイスト、ジルバ、ゴーゴー、竹の子族、パラパラ・・・、流行りのダンスっていろいろあって、最近はHiphopが全盛ですけど、ずっと続いているものもあれば、それっきりになってしまったものの方が多いのかなぁ?
昔から日本では、習い事をする人ってたくさんいたんだそうです。戦国の武将だって能を舞ったり、歌を詠んでいたりしたわけだから、習い事好きってのは日本人の根底にあるものなのかもしれません。
バレエや日舞を習う良家の子女ってのは昔からいたけど、今は大人がダンスを習う時代になってきたなぁって思います。(わたしもその1人だけど)
フラメンコ、フラダンス、ベリーダンス、といった民族系のものもあれば、大人のバレエなんてのもあって、踊ることを楽しむ人は着実に増えています。
アマチュアの場合は楽しむってことが主体だからいいんだけど、プロの場合は相変わらず厳しい状況が続いています。つまり「ダンスだけじゃ食べていけない」ってことです。そんな日本のダンスの世界を少しでも変えていきたいと著者は熱く語っています。
文明がどんどん進化して、より少ないエネルギーで生きていけるようになり、身体性がどんどん希薄になっていく結果、ダンスという芸術が持つ重要性はますます増していくだろうと思う。(中略)
そしてなにより、良いダンスがないと、オレが死んでしまうからである。オレは魂が震えるようなダンスを見ていないと、心のどこかが死んでいく。俺は今生きているリアル、生きるほかないリアルを真摯に見つめ、踊ろうとするダンサーを全力で支えていきたい。なぜならそういうダンスによってオレが生かされているからである。そんな切実な私利私欲に基づいているので、オレがダンサーのために尽力するのは当たり前のことだ。
そうだよね、そうだよねって、この言葉を噛みしめてしまいました。ダンスの素晴らしさを知らない人が多過ぎる!ダンスの楽しさを知らない人が多すぎる!自分が踊るにせよ、人のダンスを見るにせよ、そういう機会を増やさないことには何も始まらないのです!
わたし自身、あと何年踊れるのか?なんて考える事が時々あるのですが、この本を読んでいるうちに、そうか、その後にだってやれることは沢山あるじゃないかってことに気付きました。そういう夢を与えてくれた著者に感謝!
1272冊目(今年13冊目)☆☆☆☆☆☆
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