『坊主失格』 小池龍之介
僧侶でありながら、仏教にこだわらないスタンスでの執筆や講演活動をされている小池さんの存在は知っていましたが、本を読んだのこれが初めてです。
この本で小池さんは寺の子として生まれながら、煩悩だらけで、どうしようもない問題児だったご自分の事を書かれています。いつも心が満たされないという気持ちの反動で、とんでもない発言や行動をしていたのだと、こうやって告白できるほど、今は静かな気持ちで暮らしていらっしゃるという事なのでしょう。
今日「クローズアップ現代」を見ていたら、「境界性パーソナリティ障害」に苦しんでいる若者が多いという内容でした。自分が家族や友達などから愛されたいという思いが非常に強く、相手が自分に対して興味がなくなることを極端に恐れるという症状です。これが、かつての小池さんの状態とそっくりな症状でビックリ!
自分が孤独であることに対する恐怖がその原因なのだそうですが、小池さん曰く「すべての人間は孤独だ」ということに気付くことができれば、そこから逃れることができるのだそうです。人間はすべて1人で生まれ、1人で死んでいくものなのだという、当たり前のことをわたしたちは忘れてしまっているのですね。
なにかに対して嫌悪感を抱くのは、相手のネガティブな要素と自分も心の奥底に隠し持っていて、相手を見るとその要素が記憶の底から浮かび上がり再現されそうになるので、苦しくなるからにすぎないのだ(本文より)
自分が持つ黒い部分と同じものを他人の中に見つけたとき、それを一番嫌なものだと感じるというのは皮肉なものです。意地の悪い人は、他人の意地の悪さに敏感だし、出しゃばりな人は、他人が目立つのが大嫌い!人間ってそういうものなんですね。
苦しみとは「我」という錯覚ゆえに、ある
自分という存在の価値を少しでも上げようと思い努力する、という行為をし続けていくと、いつからか苦しみが生まれてきます。最初は好きで始めたことだったはずなのに、それが苦しくなってきたら、ちょっと見直してみた方がいいのかもしれません。
何事も少し慣れてくると他人と比較するようになってきます。そこにはネガティブな感情が生まれてきます。「クラスで一番になりたい」「あいつにだけは負けたくない」というような思いが、自分をドンドン追い込んでいきます。
そんなことよりも、自分の中での絶対評価こそが大事なはずです。以前よりも進歩している」部分が少しでも見つかれば、そこには幸福感が生まれます。
他人が何と言おうと気にならない、他人が何をしていようと気にならない。そういう境地に少しでも近づきたいものです。
1280冊目(今年21冊目)☆☆☆☆
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僕も本作読みました。
小池さんの本は何作が読みましたが、
そのバックグランドがわかり、過去作により説得力が増しました。
程度の差はあれ、小池さんの過去の状態に自分も心当たりあるので、
共感する部分も多かった。
太宰の人間失格をもじっているタイトルですが、このタイトルはこの本の本質を捉えているように思います。
まさに、失格のような状態から、どういう風に成長していったか。
合格への道のりの記録。
人間は誰しも失格がスタート地点なのかもしれませんね。
何度か、泣いてしまいました。
人を選ぶと思いますが、よい本ですよね。
>「境界性パーソナリティ障害」
そうなんですね~、調べてみようっと。
投稿: ジュール | 2011年3月 4日 (金) 11:05
ジュールさん☆おはようございます
他人から愛されたいと思いながら、逆の事ばかりしてしまう心理って怖いですね。
結局は自分の事しか考えられなくなってしまって深みにはまってしまうらしいのですが、それに自分自身が気が付かない限りどうにもならないのです。
小池さんはそういう人たちを救いたいと思ってらっしゃるのでしょうね。
投稿: Roko(ジュールさんへ) | 2011年3月 5日 (土) 09:53