映画 「わが心の歌舞伎座」
2010年4月、東京・銀座の歌舞伎座が、建て替えのため59年の歴史に幕を下ろしました。
2009年1月の「古式顔寄せ手打ち式」から2010年4月30日の閉場式までの16カ月間にわたる歌舞伎座さよなら公演に密着し、歌舞伎の真髄に迫るドキュメンタリーです。
名優たちが歌舞伎座への思いを語るほか、稽古風景や舞台裏の様子なども映し出されています。
歌舞伎座には数回しか足を運んだことがありませんが、あの独特の空気は気が引きしまる雰囲気を醸し出していました。
普段わたしたちが見ているのは、すっかり出来上がった状態のお芝居なのですが、その制作過程を見られるのは、とても興味深いものでした。
他のお芝居では、戯曲作者や舞台監督が演出をするのですが、歌舞伎の場合は主演俳優が演出を行うというのが、とても意外でした。主演する方は特別な存在なのですね。
同じお芝居でも、役者さんによって表現も違うし、衣装も違うし、背景だってその度に書き換えるから、二度と同じものはやらない(できない)のだというところも、歌舞伎の魅力の一つなのかもしれません。
そして、明日が本番という最後のお稽古は、歌舞伎座のロビーでやっていたというのも面白いですね。これもまた、歌舞伎独特の考え方なのでしょうか。
歌舞伎の俳優さんたちは、子供のころから舞台に出ているので、歌舞伎座は仕事の場でもあり、遊び場でもあったのですね。そこが無くなってしまうのは、実家が無くなってしまうような感じなのかしら?
歌舞伎座に出勤してくる俳優さんたちの姿にも興味が湧きました。スーツを着て入ってきた時は、どうってことない男の人なんだけど、控室で化粧をして衣装を着けると、全くの別人になってしまうんですね。
背中など自分で届かないところの白塗りなどは手伝ってもらうけど、それ以外の化粧はすべて自分でやっているのはすごいなぁと思いました。演出も含め、自分たちで作っていく部分が多いところこそが、歌舞伎の魅力の原点なのですね。
大道具、小道具、かつら、衣装など、歌舞伎の裏方さんたちのお仕事も興味深く見ることができました。そのほとんどが手仕事で、とても細かい作業です。大勢の人たちの努力が、魅力ある舞台を作り上げているという事がとても良く分かりました。
今は新しい歌舞伎座を建設中ですが、できたらお芝居を是非見に行きたいなぁと思います。
この映画の上映は3月11日までですが、4月9日からシネマ歌舞伎のアンコール上演があります。観たいなぁと思うものが何本かあるので、とても楽しみです。この映画もその時にまた上映されるので、興味のある方は是非ご覧くださいね。
キャスト:
市川團十郎、尾上菊五郎、片岡仁左衛門、坂田藤十郎、中村勘三郎、中村吉右衛門、中村芝翫、中村富十郎、中村梅玉、坂東玉三郎、松本幸四郎
監督:
十河壯吉
撮影:
柏原聡
音楽:
土井淳
ナレーター:
倍賞千恵子
2010年日本映画
配給:
松竹
上映時間:
167分
この映画のオフィシャルサイトは → こちら
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