『末裔』 絲山秋子
省三さんは我家に入ろうとしたところで、玄関の鍵穴がないことに気付いたのです。思わぬかたちで家から閉め出されてしまった彼は、夜の街をさまよっていました。
そこへ見知らぬ男が声をかけてきました。彼は「乙」という名前の占い師だと名乗りました。行くあてのない省三さんは、乙に紹介されたビジネスホテルで一夜を過ごすことになったのです。
かつては平凡な家庭を築いていたつもりだったのに、子供たちは家を出ていき、妻には先立たれ、1人暮らしをしていた省三さんは、これといった楽しみもなく、将来への夢もなく、毎日が過ぎていくことだけを考えるようになっていました。
突然家に帰れなくなったことで、彼はいつもと違う毎日を過ごすようになりました。普段会わなかった人たちと言葉を交わし、ずっと訪れることのなかった土地へ行ってみたりするうちに、色んなことを考えるようになったんです。
不器用な中年男性の気持ちを、こうやって改めて考えてみると、けっこう可哀想なのかも?と思えてきます。家長であらねばならぬとか、男だからなんてムリしちゃって、あげくの果てに家族から嫌われてしまうのって何だろう?ってね。
視点を変えてみると、今まで気が付かなかったことが分かってくるんだなぁ。今まで何してたんだろう?ってことに気付けた省三さんの未来はきっと明るいと信じています。
1293冊目(今年34冊目)☆☆☆☆☆
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かみさまの贈り物~読書日記~
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おはようございます。Rokoさん。
一人取り残された中年男性の心の内が、本当にリアルに描かれてましたよね。
さすがです!
ラストも後味がよくてとてもよかったですね。
投稿: ゆう | 2011年5月18日 (水) 10:41
ゆうさん☆こんにちは
男前の絲山さん、男性心理の方がよく分かってるみたいですね。
こういう気持ちで毎日を過ごしている中年男性に、是非読んで欲しいですね。
投稿: Roko(ゆうさんへ) | 2011年5月18日 (水) 13:01