『最新脳科学でわかった 五感の驚異』 ローレンス.D・ローゼンブラム
五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)を駆使してわたしたちは外界と関わっているのですが、その存在を気付いていない部分というのが非常にあるのだなぁということを、この本を読んで強く感じました。
たとえば食事といえば、味覚と嗅覚のことばかり意識してしまうけど、実際には五感すべてを総動員しているのですね。
食べる前に目で味わい、硬さや柔らかさや粘りを味わい、噛みしめてその硬さやプチプチ感やサクサク感を味わい、のどこしのツルツルを味わう。って考えていくと、実に複雑な感覚の積み重ねなんだなぁって思えてきました。
耳・鼻の穴が2つずつあるのは、その2つの地点で情報を受けたときの時差によって相手との距離を測っているのだという点は、今まで気づかずにいました。
耳で周りのものとの距離を測り、一人で山の中を走り回る盲目のマウンテンバイカー。絵具の粘度で色を読み取る盲目の画家。相手の顔に触ることで話を読み取ることができたヘレン・ケラー。
ある感覚が使えなくても、他の部分で補うというか、それ以上の能力を発揮する人の存在を知るにつけ、自分の中にはまだまだ使っていない能力が沢山あるのだろうなと思えてきます。
この本の中で一番気に入ったのはこの部分。
顔を見れば、その人の素性、性別、感情状態、意図、遺伝的健全さ、生殖能力、そして(唇の動きを読んで)言葉によるメッセージすらたちまちわかる。~中略~ 顔がこれほど重要なものであるために、脳はあらゆるところに顔を見出そうとする。だから顔でないものが顔に見えるのだ。
山や雲や、車などが人の顔に見えてしまうのはこのせいだったのですね。丸いヘッドライトがついている車が可愛く見えるのは、こういうことだったのか~!
何か違うと感じるときには、きっと五感のどこかが違うものを見つけ出しているのでしょうね。直感と呼ばれるものは、そういう部分の事なのでしょう。
感覚は鍛えれば鍛えただけ研ぎ澄まされていくはずです。普段気にしていなかった感覚を意識すると、何か面白いものが見出せそうな気がしてきました。
1312冊目(今年53冊目)☆☆☆☆☆☆
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