『ハウス・オブ・ヤマナカ 東洋の至宝を欧米に売った美術商』 朽木 ゆり子
日本の多くの美術品と海外の美術館で出会う事が多いのだが、それがどのようなルートで海を渡っていったのかということについては、これまで全く知らないでいました。
この本で取り上げられている House of Yamanaka(山中商会)は、明治時代にニューヨークに出店し、多くの日本美術品・中国美術をアメリカに紹介していったのです。
ニューヨークを皮切りに、ボストン、シカゴ、そしてロンドンにまで支店を開設し、現在多くのアジア美術品を所蔵している、メトロポリタン美術館、ボストン美術館、フリーア美術館、大英博物館などに優れた美術品を納めていました。
ロンドンでは英国王室からも注文を受けていたほどで、現在では想像できないほどの大きな商売をしていたのです。
第二次世界大戦によって、店を閉めなければならない状況になっても、彼の地で愛された山中商会は酷い扱いを受けることなく、淡々と在庫を売りさばいたのだとか。それは、まっとうな商売をしていたこの会社への評価が高かったからなのでしょう。
明治時代に英語を学び、アメリカに渡り、こんなにも大きな商売を成功させたのに、日本ではちっとも知られていないって不思議です。こういう事実も美術史や現代史で教えて欲しいものだと思います。
きっと、これ以外にも外国で努力して仕事を成し遂げた人たちは沢山いたのだろうなぁと思います。そういう物語を色々と読んでみたいなぁと思いました。
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