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『小さいおうち』 中島京子

小さいおうち

中島京子(なかじま きょうこ)

文春文庫

第143回(2010年上期)直木賞受賞

 第二次世界大戦前の、東京郊外に建てられた「小さいおうち」。そこに住むのは美しい時子奥様、恭一ぼっちゃん、かなり年の離れた旦那様、そして女中さんのタキさん。

 

 そのタキさんの回想で物語が語られていきます。

 

 戦前の中流以上の家庭では女中さんや子守という仕事をしていた人がかなりいたようですね。たぶんタキさんと同じ世代であるわたしの母の家にも子守をする「ねえや」がいたそうですし、わたしが子供のころにも近所に女中さんがいる家が何軒かありました。

 

 時子奥様はお嬢様がそのまま奥さまになった方ですから、家事などは余りなさりません。実質的に家を切り盛りしていたのは、住込みの女中さんであるタキさんでした。

 

 第二次世界大戦に突入しても、日本国内は情報が制限されていたせいか割にのんびりしていたのですね。タキさんが甥っ子から「そんな訳ないだろう」と突っ込まれてしまうくらい緊迫感のない状態だったというのは、ある意味怖いことです。

 

 本当のことは知らされないまま「小さいおうち」の幸せな暮らしが少しずつ無くなっていくのが、とても悲しい気がしました。

 

 そして、タキさんが死ぬまで胸に納めていた秘密は、とても重いものでしたね。当時の人としては当然の選択とも思えますけど、誰にも言うことができなかったんだろうなぁ!

 

 淡々とした語り口で語られるある一家の物語なのですが、途中からどうにも目を離せない感じになっていき、最終章で「あっ、そうだったんだ!」という驚きに変わりました。

 

 実に見事な作品です。でも、男性には分かってもらえないかも?と思う部分もあるので、すべての女性におススメします。

 

1378冊目(今年19冊目)☆☆☆☆☆

 

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どくしょ。るーむ

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コメント

こんばんは。
この作品は戦前戦後の時代にタイムスリップしているかのようでした。
戦争というのは身近であり遠い存在だったのだなと思いました。
タキさんはとても素敵な方だったのに、最後はちょっとかわいそうでしたね。
でも孫が頑張ってくれて良かったです。

苗坊さん☆こんばんは
紀元2600年(1940年)には、様々な行事が予定されていたようですね。
歌もあるんですよ♪
今や日本とアメリカが戦争をしたことすら知らない人たちが増えてるくらいですから、健史クンみたいな子がいても不思議ないなぁと思いますねぇ。
でも、あれだけ頑張ってくれたんですからいい子じゃないですか(#^.^#)
タキさんも最後の方は記憶が怪しい感じもあったしね。

こういう形で戦争の恐ろしさ、虚しさを伝えてくれるという意味でも素晴らしい作品だと思います。

こんばんは。
これ、良かったですね。
赤い屋根の洋館も、慎ましやかに穏やかに暮らす人物像も素敵で、忍び寄る大きな不幸と小さな秘め事に、心を揺らしながら読みました。
確かに男性には伝わりづらいかも(笑)
タキさんと健、どちらの記憶が正しかったのかはわからないですけど、ラストはこう繋がるのかと驚かされましたね。

ia.さん☆こんにちは
タキさんは都会の豊かさを目の当たりにして、さぞかしビックリし、それに触れることができる幸せを満喫してたんだろうなぁって思いました。

色んな秘密を知ってしまったタキさんが、結局結婚しなかったのは、何だかわかるような気がします。

この本は読んでいませんけれど、私の母のうちにも女中さんや子守さんがいたそうです。商売をしていたので、祖母と祖父は仕事をしなきゃならないので、家事を任せる人と子供の世話をする人がいて、そのほかに書生さんもいたそうです。

紀元2600年の歌、両親ともに知っていて歌っていましたね。

ゆみりんこさん☆こんにちは
昔は、商売している家に女中さんがいることは珍しくなかったですよね。
紀元は2600年♪って曲、わたしたちの親の世代は歌ってましたよね。
こういうことも記録しておかないと、忘れられちゃうんだろうなぁって思います。

紀元2600年って、幻の東京オリンピックの年ではなかったですか?
勝鬨橋とかできたりして・・。そんなこともちょっと思い出したのですが・・。

ゆみりんこさん☆こんばんは
幻の東京オリンピック、そして幻の冬季オリンピックも予定されていたらしいです。
大正から昭和の初期って、何でもやっちゃうぞ~っていう気分が一杯の時代だったようですね。

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