『下町ロケット』 池井戸 潤
この物語の主人公は、大田区の町工場の2代目社長さん。元々はロケット開発に携わっていたのだけれど、打ち上げ失敗の責任を取って辞めたという過去がある人です。
わたしが子供の頃、同級生のお父さんの仕事はほぼ全部分かっていました。だって、自営の商売や工場の家がほとんどだったんです。クラスの中でも、お父さんが会社員というのは少数派だったように記憶しています。
家の父も職人でしたから、その価値観はとても良く分かります。
その基本にあるのがプライドです。自分の技術に自信が無かったら、職人なんてやってられません。「これをやらせたら、自分の右に出る者はいない!」ってものを各自持っていて、それを維持するために、見えないところで努力してるんです。
主人公の佃さんにも、そういうプライドがありました。特許を巡る争いの中で、中小企業だからと言って見下すような態度をとる大手の会社の人に対して、絶対に負けないぞという自負があるんです。
そのために不要な努力を社員に強いていると反発されたりもしますが、将来の事を考えたら、こちらの方が正しい道なのだと決めて、前進していく姿はステキですねぇ!
こんな小さな会社が作ったものなどと、最初はバカにしていた大会社の社員たちが、少しずつ佃さんの会社の技術力に目を見張るようになっていく過程が、とても爽快でした。
このところ就職難だと言われていますが、それは学生たちが大企業にばかり目を向けているからで、中小企業は相変わらず人手不足だなんて現状を、この小説が少しでも助けてくれたらと思います。
1438冊目(今年79冊目)☆☆☆☆☆☆
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