『55歳からのハローライフ』 村上 龍
「結婚相談所」「空を飛ぶ夢をもう一度」「キャンピングカー」「ペットロス」「トラベルヘルパー」の5編からなるこの本を読み終わって感じたのは、55歳からというのは、実に難しい地点なのだという「現実」です。
人生の折り返し点を過ぎて、それなりに安定している人だとしても、親のこと、子供のこと、自分の老後の事、仕事のこと、家族関係のこと、何らかの不安を抱えています。不景気にあおられて早期退職やら、リストラなどで職を失ってしまったら更に不安が増えるばかりです。
好きな人と結婚したはずなのに、中年になってからは夫婦でまともな会話をしたことがなくなってしまったり、必死に再就職先を探しているつもりなのに「それではダメです」と就職斡旋会社の人に言われてしまったりする現実。
夫婦だからお互いに分かりあえているという幻想があったり、逆に相手の事などどうでもよいと切り捨ててしまっていたりする人たちが作品の中で描かれていましたが、わたしの身の周りでも同様の事をとても多く感じます。
一番身近な家族にさえ本音で話ができなかったり。会社という鎧に守られてきた自分が、今はただの一個人になったということが自覚できなかったり。ああ、どうしてこんなに不器用なんだろう?と思う事の連続です。
自分という存在と、他の人との関わり方をここいらでじっくり考えておかないと、とんでもないことになるぞ!という事を目の前に突き付けられた気がします。
重いテーマなんだけど、逃げたらアカン!正面から立ち向かわねばと思うのでした。
この本は 書評サイト 「本が好き!」 より提供して頂きました。どうもありがとうございました。
1477冊目(今年2冊目)☆☆☆☆☆☆
トラックバック先
活字の砂漠で溺れたい
« 『挑戦する脳』 茂木 健一郎 | トップページ | 映画 「立川談志」 »
「日本の作家 ま行」カテゴリの記事
- 『字のないはがき』 向田邦子 角田光代 西加奈子(2021.04.12)
- 『コンビニ人間』 村田紗耶香(2021.04.11)
- 『手ぶらで生きる。』 ミニマリストしぶ(2021.04.10)
- 『今日の人生 1』 益田ミリ(2021.04.09)
- 『同行二人(うさぎとマツコの往復書簡4)』 中村うさぎ マツコ・デラックス(2021.04.07)
「本が好き!」カテゴリの記事
- 『死神の日曜日』 伊東良(2020.09.14)
- 『わたしはフリーダ・カーロ 絵でたどるその人生』 マリア・ヘッセ(2020.08.14)
- 『生きてく工夫』 南伸坊(2020.04.16)
- 『おわんわん』 乾栄里子 100%ORANGE(2020.02.14)
- 『どんなことからも立ち直れる人』 加藤諦三(2020.01.17)
こちらにも。
Rokoさんのレビューを拝読し、この本を早急に読まなくっちゃぁと思った私です。
>他の人との関わり方をここいらでじっくり考えておかないと、とんでもないことになるぞ!という事を目の前に突き付けられた気がします。
ちょっと怖いなぁ~、でも読みます。
投稿: ryoko | 2013年1月 5日 (土) 20:16
ryokoさん☆ぜひぜひ
今までの村上龍からは考えられないほどリアルな話で、身につまされることも多いんです。
ぜひ読んでくださいね!
投稿: Roko(ryokoさんへ) | 2013年1月 5日 (土) 21:47
Rokoさん こんばんは
重たいんだけど、何処か優しさにあふれた、
龍さんらしい作品でしたね。
希望という言葉の本当の意味を考えさせられる作品でした。
投稿: yori | 2013年2月19日 (火) 22:29
yoriさん☆こんばんは
現実は厳しいけど、希望があるから生きていけるのですよね。
龍さん、さすがだと思いました。
投稿: Roko(yoriさんへ) | 2013年2月20日 (水) 00:33