『逆回りのお散歩』 三崎 亜記
2つの地方都市が合併することに対して、主人公は世間のほとんどは賛成賛成しているのだと信じていました。しかし、ネット上で反対している勢力がいるのだという情報を知ってから、彼女は漠然とした疑問を持つようになったのです。
ネット上ではこれだけ反対している人がいるのに、そういう人たちの活動が報道されることがないのは何故なのか?報道されないという事は、本当に反対している人達はいないという事なのか?イヤ、そんなはずはない。誰かの意志で握りつぶされているという事なのか?いったい何が真実なのか?
現代は情報社会と言われてますけど、わたしたちの身の回りにある情報ってどこまで信じていいものなのかを考えてみると、実は不確実なことばかりなんですよね。意図的に編集されているものもあれば、ただ単に片手落ちな場合もあるし、本当の事ってのは実際に自分の目で見てみないと分からないものだということを忘れてはならないのだと思います。
更に大事なのは、自分の目で見たとしても、それはあくまでも自分の感想でしかないという事です。立場が変われば、見えてくるものや感じることは違ってしまいます。
この本に収められている「逆回りのお散歩」と「戦争研修」は、三崎さんのデビュー作「となり町戦争」につながっているのだということを、強く感じました。
自分がどう生きようとしているのかとは無関係に、巻き込まれてしまう社会の在り方と真剣に対峙するのか?見なかったことにして流してしまうのか?そんなのは嫌だと逃げるのか?どう対応していくのかは各個人の自由です。
どれを選ぶにせよ、それは自分の決断なのだということを忘れてはならないのだということを強く感じました。
三崎さんの作品は怖いけど面白い、読みだしたらどうにも止まらなくなるけど、読み終わった後に、もの凄く考えさせられるのです。
1497冊目(今年22冊目)☆☆☆☆☆☆
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