『欲望のマーケティング』 山本由樹
日本人は曖昧な相対性の中で、物事を判断したがる民族だという事です。
よく言えば柔軟性がある。悪く言えば流されやすい。
よく言えば団結力がある。悪く言えば個としての判断力がない。(本文より)
この本の著者、山本さんは「STORY」と「美ST」の編集長だった方です。女性誌といえば「ファッション」だという固定観念を崩し、外側(洋服)できれいにするよりも、内側からきれいになることに重きを置いた編集をされ、「美魔女」ブームを生み出した方です。
何かを提案するときに、提案者が陥りがちなのは「独りよがりな考え」です。「わたしがいいと言ってるんだから、みんなもそう思うはず!」という事が良くあります。何故そんな事になってしまっているかといえば、自分は世間より一歩リードしているという間違った自己認識だったりします。
例えば、割と最近まで40代以降の人をターゲットにした服のほとんどが「おばさん向け」でした。変な花柄、地味な色合い、そうでなければいきなりアニマル柄だったり・・・。かといって若者向けの服を着ると、無理して若作りしている感が強くなっちゃうし。ちょうどいい感じのものって、なかなか無かったんです。
40代以降が無理せず、でもカッコ良く着られる服を企画して欲しいのにね。靴でも雑貨でも、何でもそうだけど、単にカワイイとか、流行とかではなく、大人がカッコ良く使えるものって、日本では意外に少ないんです。
私たちが考えるより、消費者はよっぽど先に行っています。だから私たちは反対に、「自分たちは遅れている」という意識を持つことが重要なのです。
反感はある時点で好意に変わる可能性がありますが、「どうでもいい」存在は、評価の場にさえ上がってきません。
この程度でいいんじゃない?という控えめなラインで企画されたものって、結局はつまらないものになってしまうんです。ちょっと奇抜かな?やり過ぎかな?位の方が面白いし、カッコいいとわたしは思うんです。
個人レベルでも、人がやっていることを指をくわえて見ていて、あなたはイイわねぇなんて言ってる人より、やりたいと思った事をエイっとやってしまう人の方が魅力的ですもの。
欲しいもの、やりたいこと、好きな人・・・、欲望を持っているからこそ人間は動くことができるのだという、根源的な部分を分からない人にはマーケティングはできませんよね。
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