『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』 橘玲
数年前に社会現象にまでなってしまった、「やればできる」と説く勝間和代さんと、「そんな勝間さんのような生き方は目指さない」という香山さんの論戦を覚えていますか?この本はその論戦をきっかけとして書かれた本なのです。
この厳しい世界の中で、結婚しても、一人になっても、子供がいても、生きていこうと思うなら、他人より秀でた能力を身に付ければいいんです。それがあれば、いつでも自分らしく生きていけるのです。という考えを実践し、布教している勝間さん。その考え方に共感し、努力している人が世の中にたくさんいるのは間違いありません。
「努力すれば報われる」という論理は美しいし、それを目指すことを非難されることもまずないでしょう。でも、現実はどうなんでしょうね?資格などの勉強を一生懸命してるけど、ゴールになかなかたどり着けない人。それどころか、やる気が3日で萎えてしまう人の方が現実には多いんです。
更に考えてみると、3日坊主どころか、最初から目指すことなどない人がほとんどです。とりあえず仕事があればいいやと考えている人。努力したってしょうがないと考えている人たちこそが、世間の大多数なんですから。
「他人と過去は変えられない、変えられるのは自分と未来だけ」だから、自分を変えていこう!という掛け声に乗ったはいいけれど、結局変わらない自分にため息をつくばかり。真面目な人ほど、自分の努力が足りないのだと悩んでしまったりするわけです。
そこで、思い切って発想の転換をしたほうがいいと著者は力説しています。努力しても実にならないのは、決して自分が怠けているわけではなく、それが自分に向いていないのだと理解することが大事なのだと。
「やってもできない」という事実を受け入れるところから、真の幸せが見つけられるのだということに気付けたら、人生はもっと楽になるはずなんです。
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