『ことり』 小川洋子
幼稚園の鳥小屋を、ボランティアとして面倒を見ている男性のことを、園児たちは「小鳥の小父さん」と呼んでいました。きっと園長先生も、他の人たちも、彼のことは単なる「鳥好きの小父さん」と思っていたのでしょう。
小父さんには、小鳥が大好きなお兄さんがいました。小鳥と会話ができるようになったお兄さんは、しだいに人間との会話ができなくなり、唯一彼の話が聞き取れる弟(小父さん)とだけしか会話ができなくなってしまいました。
両親が亡くなった後、小父さんは管理人として働き、生計を立てていました。毎日決まった時間に起き、決まった時間に出かけ、同じものを食べ、淡々とした毎日を送っていたのです。
そんな小父さんの人生は、単純なようでいながら、どこからか小さな波風が立つのです。その波風に動揺したり、勇気を振り絞って立ち向かったり、反省したり、喜んだり、毎日同じように見える毎日ですが、同じ日は2度と来ないのです。
小川さんが書かれる本にいつもある、静かな流れが今回も感じられました。ああ、すてきな世界だわ!
1524冊目(今年49冊目)☆☆☆☆☆
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苗坊の徒然日記
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こんばんは。
小父さんの生活は決していいものではないですし、境遇も可哀相な気もしますが本人はきっとそう思っていなくて、小父さん独特の時間の流れ方が良いなと思いました。
小川さんの描かれる世界観は私も好きです。
投稿: 苗坊 | 2013年8月 4日 (日) 00:45
苗坊さん☆こんにちは
幸せの尺度は、人それぞれですから、あれで良かったんじゃないかと思います。
自分らしく生きていけること、それこそが幸せなのだと思います。
投稿: Roko(苗坊さんへ) | 2013年8月 4日 (日) 11:41