『コミュニケイションのレッスン』 鴻上 尚史
「世間」とは、あなたと利害・人間関係があるか、将来、利害・人間関係が生まれる可能性が高い人たちの事です。
「社会」とは、今現在、あなたと何の関係もなく、将来も関係が生まれる可能性が低い人たちの事です。
鴻上さんは、日本人はこの2つを明らかに分けて生きていると指摘しています。それに対し、外国の人たちにとっては「世間」というのは存在せず、自分の周りはすべて「社会」なのだというのです。
「世間の人」とは価値観が共通しているという前提条件があるので、そのルールの中で生きていくことが重要視されます。そのルールから外れれば、「世間に顔向けができない」とか「世間に笑われる」という事になります。
でも、現実の社会には、様々な価値観を持った人がいます。ある人が常識と思っていることが、別の人にとっては非常識ということが、本当にたくさんあるのです。
讃岐の人にとっては「うどんにコシがある」のが当たり前だけど、福岡の人にとっては「うどんは柔らかい」のが当たり前なのです。イタ飯好きにとってパスタは「アルデンテ」が美味しいのだけど、オフィス街の喫茶店のナポリタンが「アルデンテ」だったら怒られちゃうでしょう。
このように社会というのは、バラバラなものなのです。すべての人が同じなんてことはあり得ないのです。それなのに、みんな同じなのだと信じている人がまだまだ沢山いるんです。そして、そういう子供たちを増やしているんです。
自分が良かれと思ってやったことが、相手にとっては「大きなお世話」である可能性は常にあるんです。自分の想像というのは、自分の体験の範囲でしか考えられないから、本当に相手の事を思うなら、ズバリ相手に聞いてみるしかないのです。
本当の意味で「人に迷惑をかけない」ためには、コミュニケーションが大事なのです。
「一生懸命に頑張ったのに分かってもらえない」なんていうのは、コミュニケーションができていないことの言い訳でしかありません。こんなこと聞いていいのだろうか?なんて悩んでいるより、とにかく聞いてみることしかないんですね。
親から「人に迷惑をかけない」ようにしなさいと教わったという人はきっと多いでしょう。でも、「自分と同じような考え方をする人ばっかりじゃないんだからね」という「但し書き」も含めて教わってきた人はどれだけいるのでしょうか?
社会に適応できなくて悩む若者が増えていると、いろんなところで聞きます。「世間」と「社会」の違いを教わってこなかったということが、その大きな原因なのかもしれません。「自分にとって予測不可能なことが社会では常に起きるのだ」と教えることこそが親や周りの大人の役目なのだと、この本を読んで強く思うようになりました。
ストレスに強い人とは、1人で抱え込む人ではなくて、うまく周りの人と話すことで発散できる人なのです。
1人でどんなに悩んだってしょうがないんですよ。誰でもいいから捕まえて、相談でも、ボヤキでもいいから、とにかくしゃべってみればいいんです。SNS やブログに書いてみたっていいんです。きっと誰かがヒントをくれるはずです。
答えなんか見つからなくてもいいんです。話を聞いてもらったり、文章を書いたりするだけで、発散できるものがあるんですから。
劇団という、大勢の人と関わる仕事をされてきた鴻上さんならではのコミュニケーション論は、わたしにとって素直に「腑に落ちる」ものでした。
最後の言葉も、じわっと心に沁みました。
人間はゆっくりとしか変われないのです。
決して焦らないように。
1539冊目(今年64冊目)☆☆☆☆☆☆
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