『脳はバカ、腸はかしこい』 藤田 紘一郎
私が20年前に発表した「寄生虫や細菌などを一方的に追放したキレイ社会が日本人の免疫力を低下させ、アトピーや花粉症などのアレルギー病を増加させた」という環境衛生説は日本の医学界ではまったく省みられることなく、無視されてきました。(本文より)
日本人のキレイ好きは日本にいると気が付かないのですが、外国へ行って見ると、あれは異常だなぁって思えてくるものです。衛生的なのが良い事だという思い込みは、日本人を「きれいでないと不安になる症候群」にしてしまったのかもしれません。
この本の著者である藤田先生も、若いころは衛生的である事は正しいと思っていられたのだそうです。ところがアジア諸国を訪ねて、衛生状態が決して良いとは思えない場所に行って見ると、アトピーはおろか「うつ病」すらも存在しないという事実に驚愕してしまったのです。
大腸菌などの、いわゆるキタナイものに日常的に触れることによって免疫力が強まるのだという理論は、最近やっと認められてきたのだそうですが、考えてみれば当たり前のことです。昔から、地面に落ちたものも拾って食べるような貧乏な家の子は丈夫で、白亜のお城に住むお嬢様は病気がちなんてのは、よくある話でしたものね。
かつては単なる悪者であった寄生虫だって、実は身体に良いものだったという説を唱えている藤田先生は、自ら寄生虫を飼ってらっしゃのだそうです。その結果、とても体調が良くなったというんだから、自然というのは上手くできているということなのでしょうね。
思い込みに騙されてしまって、まともな判断ができなくなってしまう脳と比べて、これは体内に入れてはマズイというものを食べてしまったら、直ちに排出しようとする腸ははるかに素晴らしいとおっしゃる藤田先生の主張に、わたしはとても共感してしまいました。
本当は悪い事と理屈では分かっていても実行できない脳の馬鹿さ加減に呆れることが多い今日この頃、本当に自分の身体の事を心配するなら、腸の言う事を聞いてみることこそが大事なのだなと、この本に教えてもらいました。
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