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『音楽は何も与えてくれない』 津原 泰水

音楽は何も与えてくれない
津原 泰水
幻冬舎

 津原さんの人となりを作り上げた第一歩は、子供相手でもトコトン説明をし続ける父親だったのだと思います。それを迷惑だなぁと思いつつも、そういう風にしかできない父の事を愛している著者の気持ちがとても良く伝わってきました。

 父親とギターを買いに行った日のこと、音楽のことはまるで分らないけれど、子供にできる限りのことをしてやりたいと思う気持ちをとても強く感じました。

 ジャンルは違えど文章を書く仕事をしていた父親のことを意識し、敢えて物書きを遠ざけていたようですが、やっぱり才能というのは恐ろしいもので、そんなつもりで書いたのではない文章がTVのニュースで流れてしまったりしたというエピソードにはビックリでした。

 音楽に関しては、ファンというよりマニアの域で、プレイヤーとしてもかなりのものでらっしゃるようですね。その気持ちを文章に置き換えているからこそ、素晴らしい文章が書けるのでしょう。

 これまで、津原さんの作品は「ブラバン」しか読んだ事がなかったのですが、彼の音楽に対する情熱はこういう風に培われてきたのだという事が、この本を読んでとても良く分かりました。

 「音楽は何も与えてくれない」というタイトルは、実に意味深いですね。彼の成分の殆どが音楽なのですから。

 津原さんの他の作品も読んでみようっと ♬

この本は 書評サイト 「本が好き!」 より提供して頂きました。どうもありがとうございました。 

1618冊目(今年61冊目)☆☆☆☆☆☆

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