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『資格を取ると貧乏になります』 佐藤留美

資格を取ると貧乏になります

佐藤留美(さとう るみ)

新潮新書

 「資格」と名の付くものは世の中に沢山ありますが、その中でも弁護士、公認会計士、税理士、社労士といった資格は、世の中で広く知られています。そして、こういう資格を持ってれば高収入間違いなしだよねと、ほとんどの人が信じています。

 ですから、こういった職業を目指す人はかなり多く存在しています。勉強の為に専門学校へ通っている人もたくさんいます。

 ところが、このような「士」のお仕事の環境に異変が起きていて、これから新規に参入するのは考え直した方がいいのでは?ということがこの本に書かれています。

 

 その第一の理由が仕事と人数のバランスの崩れです。弁護士についてはニュースにまでなっているのでご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、昔よりも資格取得者が増えてしまったのです。それでも仕事量が増えていれば問題なかったのですが、仕事量は昔と変わらず。つまり人が余ってしまう状況になってしまったということなのです。

 数年前に、欧米と比べて日本は弁護士の人数が少ないので、人数を増やそう → 増やすためには資格を取りやすくしよう。とい規制緩和があったのだそうです。おかげで弁護士数は増えましたが、弁護士を必要とする訴訟はさほど増えませんでした。なぜなら、日本人は欧米人のように訴訟好きではなかったのです。

 欧米と比較して日本の弁護士が少なかったのは、それなりにバランスがとれていたからだったんですね。それを考えずに弁護士だけ増やしたってしょうがなかったんです。結局は仕事の取り合いになってしまって、単価が下がるだけという辛い状態に陥っています。

 収入が少ないだけならまだいい方で、弁護士資格は取ったけれど勤め先が見つからないという人までいるのだそうです。高いお金と時間をかけて取った国家資格なのに!

 

 就職難の時代になり、履歴書に書く資格がないと書類選考も通らないよと脅される昨今です。何か資格を取らないとという気持ちになる人が増えています。その気持ちに便乗するトンデモ資格や、トンデモ講習会が横行しています。

 この本で知ったのですが、業界に疎い人を集めて講習会を開いたり、安く使ったり、時にはタダ働きさせたりすることを「ひよこ食い」と呼ぶのだそうです。エライ先生の下で勉強させてあげるからと言うと、簡単に人は集まるのだそうです。この手で業績を上げ、モナコにお住いの先生もいらっしゃるのです。

 賭け事の基本に、「儲かるのは胴元だけ」というのがありますが、資格ビジネスも同じです。儲かるのは有名な先生と学校だけです。

 

 これまで信じられてきた常識が、今や非常識ということがたくさんあります。「あの人が言ってるんだから間違いない」なんて、闇雲に信じちゃいけない世の中なんです。これなら間違いないと思っても、念のために調べ直してみる、いろんな人の意見を聞いてみるということの重要性を感じました。

 あなたが今勉強していることは、本当にあなたの役に立つことなのでしょうか?

1616冊目(今年59冊目)☆☆☆☆☆

 

 

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