『依存症』 信田 さよ子
この本ではアルコール依存症を中心に書かれていますが、依存症というものの在り方はニコチンであろうと、ギャンブルであろうと、買い物であろうと同じなのだということを念頭に置いて読み進めていくと、これまで一般に考えられてきた「依存症」とは全くイメージの違う世界なのだという事が分かります。
周りの人たちは、「あんなにひどい状態から抜け出して欲しい」「みんなに迷惑をかけないで欲しい」「このままじゃ死んでしまう」などと考え、何とか手助けできないのかと努力をします。しかし本人は、そんな周りの気持ちをちっとも分かってくれないというジレンマに陥ってしまうことが多いのです。
ところがそれは、あくまでも他者の認識なんですね。
本人の認識は全く逆で、依存者自身が被害者なんです。
誰も自分の言うことを聞かないから、周りの人が自分を理解してくれないから、よその人が変な眼で見るから、そこから逃れるためにアルコールに走るのです。そして、その無理解な人たちの代表が家族であると考えているのです。
つまり、自分がアルコールを止められないのは、家族のせいだと考えていることがほとんどなのです。
そう考えている限り、依存者は自分の問題として自覚できないというところが衝撃でした。
家族や友だちを助けようとする気持ちが、逆に依存症を助長してしまうところが盲点だったのです。
すべては自分の問題なのだと自覚し、このまま死ぬのはイヤだと思えたとき、初めて依存症からの脱出が始まるのだとこの本は教えてくれました。
アルコールに限らす、あらゆる依存症の根源はここなのだということを始めて知りました。自分は依存症という「病気」なのだと気付くこと。そこが依存症から抜け出す第一歩なのだと本人はもちろんですけど、周りの人たちが知ることこそが大事なことなのです。
依存症は決して他人事ではないと思うわたしにとって、とても意味深い一冊でした。
1679冊目(今年26冊目)☆☆☆☆☆☆
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