『ラスト・ワルツ』 柳 広司
軍人は政治をやりたがる。政治家は戦争をやりたがる。
そして、どちらも失敗する。(本文より)
結城中佐は、敵国の情報を得たり、情報操作をするために働く諜報員なのですが、軍部の頭の固い人たちのことを軽蔑しています。
何かがあったら自決すればよいなどというのは愚の骨頂であると豪語しています。なぜなら、諜報員は目立ってはいけないのです。それどころか、記憶に残ってはいけないのです。どんなに素晴らしい仕事をしたとしても、それを知るのは内部のごく僅かな人間だけなのです。
軍人や政治家は目立ちたがります。後世に名を残したいばかりにスタンドプレーを好みます。彼らの為に影のように働く諜報部員のことなど、これっぽっちも考えてはいません。それでも、諜報部員は国の為に働き続けています。
バカな政治家や元首が国を私的所有物と勘違いして、とんでもない判断を下すことは、決して珍しいことではありません。昔も今も、そういうことをしてしまう人は必ずいるのです。
今回は、「アジア・エクスプレス」、「舞踏会の夜」、「ワルキューレ」の3作品でしたが、いずれも緊張感があってとても楽しめました。その中で一番気に入ったのは、「舞踏会の夜」です。結城中佐に、また惚れ直してしまいました。
1691冊目(今年38冊目)☆☆☆☆☆☆
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結城中佐とのロマンスが切ない「舞踏会の夜」は、ダンスの時、結城中佐たちの前から人がざあっと引くってシーンが好きです。人の動きを読み尽くしている、そんなことが「普通」にできちゃう人なんですよね。
戦前のドイツ映画全盛期を描いた「ワルキューレ」も、古い映画好きとしては、知っている映画関係者の名前が出てくるのが嬉しかったです。
投稿: 日月 | 2015年8月15日 (土) 01:48
日月さん、お久しぶりです。
戦時中であっても芸術的映画を製作したり、ダンスパーティーが行われたり、ヨーロッパにはまだ余裕がある時代だったんですね。
オリンピックや映画を国威高揚に利用したナチス、思想的には許せない政府ですが、センスの良さだけは認めてしまいます。
投稿: Roko(日月さんへ) | 2015年8月15日 (土) 09:46