『思い出トランプ』 向田邦子
NHKの土曜ドラマ「とっとテレビ」で描かれていた向田さんは、いつも締め切りに追われていました。向田さんにとって、とっとちゃん他愛のない話をしながら過ごす時間は貴重は心の休まる時間だったのでしょうね。
そんな話の中に出てきた「かわうそってね、見せびらかすために小動物を獲ることがあるのよ」という言葉の意味が、この本を読んでみてよく分かりました。かわいい顔をしていても、獰猛なところもある人って確かにいますものね。
13編から成るこの小説集は、どれも日常の中で起きる物語です。ちょっとしたことが、平和な家庭に波風を立て、それが少しずつ大きな亀裂になっていったり、いつの間にか収まっていったり、何よりも怖いのは人間というものなのだと感じるものばかりでした。
向田邦子さんが脚本を書かれたドラマで育ったわたしに、この小説はいろんなことを思い出させてくれました。今ほど便利なものは揃っていなかったけれど、質素な幸せにあふれていたのが、あの頃なのかなぁって思います。
1244冊目(今年18冊目)☆☆☆☆☆
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