『人間晩年図巻 1995-99年』 関川夏央
阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件で幕を開けた90年代後半は、少子高齢化、長期不況、「紙の文化」の衰退など、現在へと至る日本社会の変質が始まった時代であった。(あとがきより)
1995年に亡くなった城達也(ジェットストリーム)、97年に亡くなった伊丹十三、99年に亡くなったスタンリー・キューブリック、この3人にはかなり思い入れがあります。
FM東京で毎晩0時から1時まで放送していたジェットストリームは、学生時代のわたしにとって1日の終わりをゆったりと過ごす時間でした。城達也さんの深くて落ち着いた声が大好きでした。今でもミスター・ロンリーを聞くと、この番組を思い出します。
伊丹さんの「女たちよ!」は高校生だったわたしにとってバイブルのようなものでした。「ヨーロッパ退屈日記」や「日本世間話大系」など、わたしの知らない世界を教えてくれる大人、メンターとして伊丹さんのことを尊敬するようになりました。「お葬式」以降の映画監督としての伊丹さんの方が有名になってしまいましたが、俳優としても伊丹さんをもっと見たかったなぁと思います。
スタンリー・キューブリックといえば「2001年宇宙の旅」ですが、この本を読んで意外なことを知りました。原作のアーサー・C・クラークは、この映画のための原作を書いたのですが、キューブリックと協力して執筆したという理由で、「2001年」の小説の印税の40%をキューブリックは受け取り続けたのだそうです。しかし、映画の印税はまったくクラークへは渡していないこと。小説の方が先に出来上がっていたにも関わらず、映画が公開するまで小説を発表することができなかったことなど、キューブリックの圧力に押されっぱなしな状態だったのだそうです。
そして、キューブリックは「2001年」の美術監督を手塚治虫氏へ依頼したけれど、多忙であることを理由に断られていたというものビックリでした。
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