『言ってはいけない』 橘玲
両親は、母語を話そうが話すまいが、食事や寝る場所など最低限の生活環境を提供してくれる。子どもにとって死活的に重要なのは、親との会話ではなく、(自分の面倒をみてくれるはずの)年上の子供たちとのコミュニケーションだ。
ほとんどの場合、両親の言葉と子どもたちの言葉は同一だから問題は起きないが、移民のような特殊な環境では家庭の内と外で言葉が異なるという事態が生じる。そのとき移民の子どもは、なんの躊躇もなく、生き延びるために、親の言葉を捨てて子ども集団の言葉を選択するのだ。(本文より)
親は子どもに対して「こうあって欲しい」という希望を持っているけれど、それが叶えられない最大の理由が、こういうところにあったというのはすごい話ですね。
子どもは、自分が生きている現実にすばやく順応しているのに、親はそれに気づかないから、親子の考え方に違いができてしまうのです。とはいえ、これは決して悪いことではないということを理解しなければならないのです。子どもは自分なりの人生を歩まねばならないのですから。
この現実を深く考えてみると、子ども同士のいじめによる自殺が多いことも、そういう悩みについて親や先生に相談しない(できない)のも、よく分かります。子どもにとって、自分が属しているグループとは同年代の人間だけなのであり、大人は関係ないのですから。
大人になっても、基本的な考え方は変わりません。自分が属しているグループだけが自分の世界であり、それ以外はどうでもいいと考えている人が殆どなのです。
そこから一歩抜け出したいと考えるなら、自分とは違う世代や違う世界に属する人との関わり合いを持つ必要があるのです。自分を高めるにはメンターが必要なのは、こういう人間の特性があるからなのだと気づかされました。
誰かにとって不都合があるから公表されないことは世の中に沢山あります。それを知らないばかりに馬鹿を見ることも沢山あります。でも、不愉快な現実の中には、違う取り組み方を考えるヒントがたくさん詰まっているのです。
この社会にはきれいごとがあふれている。人間は平等で、努力は報われ、見た目は大した問題ではない... だが、それらは絵空事だ。(本文より)
1262冊目(今年36冊目)☆☆☆☆☆☆
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