『あ・うん』 向田 邦子
狛犬さん「あ・うん」を見るたびに、この物語のことを思い出していました。子供のころ、TVで見た向田邦子さんのドラマがとにかく印象深かったのです。ドラマは見たことがあったけど、小説としては読んだことがなかったなと思い、読んでみました。
ものがたりの舞台は昭和10年代、太平洋戦争がそろそろ始まりそうな時期です。戦争の影はきっと忍び寄っていたのだろうけど、庶民生活にはさほど影響が出ていなかったころ、ある意味、かなり平和な気持ちで暮らしていたころなのでしょう。
夫と妻と夫の親友という3人の関係が微妙な空気を醸し出しています。夫の親友の本妻さんと2号さんの関係も、こういうのは今もあるけれど、昔のほうが大らかで、それぞれの立場を尊重してたんだなと感じたりもします。
向田邦子さんが描く世界は決して特別な人のものではなく、普通の人たちのものです。静かに暮らしているようでいて、とんでもない事件が発生して、それを淡々と片付けていく人たち、それこそが日本人の典型であるように思うのです。
1348冊目(今年3冊目)☆☆☆☆☆
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