『あ・うん』 向田 邦子
狛犬さん「あ・うん」を見るたびに、この物語のことを思い出していました。子供のころ、TVで見た向田邦子さんのドラマがとにかく印象深かったのです。ドラマは見たことがあったけど、小説としては読んだことがなかったなと思い、読んでみました。
ものがたりの舞台は昭和10年代、太平洋戦争がそろそろ始まりそうな時期です。戦争の影はきっと忍び寄っていたのだろうけど、庶民生活にはさほど影響が出ていなかったころ、ある意味、かなり平和な気持ちで暮らしていたころなのでしょう。
夫と妻と夫の親友という3人の関係が微妙な空気を醸し出しています。夫の親友の本妻さんと2号さんの関係も、こういうのは今もあるけれど、昔のほうが大らかで、それぞれの立場を尊重してたんだなと感じたりもします。
向田邦子さんが描く世界は決して特別な人のものではなく、普通の人たちのものです。静かに暮らしているようでいて、とんでもない事件が発生して、それを淡々と片付けていく人たち、それこそが日本人の典型であるように思うのです。
1348冊目(今年3冊目)☆☆☆☆☆
« 『花咲小路二丁目の花乃子さん』 小路幸也 | トップページ | 『血流がすべて整う食べ方』 堀江 昭佳 »
「日本の作家 ま行」カテゴリの記事
- 『ビブリア古書堂の事件手帖Ⅲ 扉子と虚ろな夢』 三上延 76(2023.03.18)
- 『よはく手帳術』 miyu 60(2023.03.02)
- 『おにぎり猫のものがたり 第一巻』 ミケパンチ 56(2023.02.26)
- 『ジュリーの世界』 増山実 48(2023.02.18)
コメント