『八月の六日間』 北村 薫
アラフォーの雑誌編集者の女性が主人公のお話。仕事で身体と心を酷使していた時、友達から誘われたのが山歩き。最初はどうかなと思っていたのだけれど、自然に触れることで癒され、たまに山へ行くことが今では生きがいになっているのです。
下っ端でいた頃は好きなだけ愚痴も言えたけど、ある程度のポジションになってくると、それすらも許されないっていうジレンマに囚われてしまいます。美味しい食事やお酒も、リラックスには大事だけど、現世から離れるということの大事さに目覚めてしまったのは、彼女にとってとても幸せなことだったのだと思います。
自然は美しく、厳しく、意外性があり、魅力的なのです。でも、一歩間違えたら死と直結してしまうこともあります。自然と触れ合うことでしか出会えないことに、一喜一憂し、自分が生きているという実感を得る。それは、何よりも豊かな時間の使い方なのです。
この本に登場した場所で、わたしが実際に行ったことがあるのは上高地だけでしたが、その描写に、行った当時の景色が目に浮かんできました。
1人で旅に出る。そこで知らない誰かに出会うっていうのも、いい体験ですよね。そんなことを感じさせてくれる、良い本でした。この本を薦めてくださったIさんに感謝。
1350冊目(今年5冊目)☆☆☆☆☆
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